新規会員一人が毎月○○○円の売上を生む 数値の大きさが現場のやりがいに
ハルメク おみせが新規会員登録を徹底している理由には、顧客接点の増加と会員一人あたりが生む年間平均売上の大きさがある。会員にはハルメクの通販カタログを毎月送付しているが、実際に店舗で新規獲得した顧客は、新聞やECサイトなど他のメディアから獲得したケースと比べて1.7倍の購入頻度を記録している。
「新規会員全体の購入金額を獲得数で割り返すと、1年で平均約9,000円の売上が生まれているとわかりました。スタッフにはこれを1ヵ月あたりの売上に換算し、『一人のお客様に新規会員登録をしていただくと、毎月約700円売上が上がる』と説明しています。
また、新規会員獲得の大切さを実感してもらうため、『新規獲得件数の達成』を目標の最重要項目に設定しました。こうすることで、2022年時点で約38%だった店頭での新規会員登録率が現在は約58%にまで伸びています」
「シニア女性を誰も一人にさせない」ポリシーを接客スタイル・場に反映
ハルメク おみせでは、顧客の買物シーンでの実情を把握した上で「『実感を語る接客』を意識している」と語る勝谷氏。たとえば、化粧品の成分について勉強会を開催し、スタッフに知識を詰め込んでも、顧客が自分ごとと思えなければ商品の良さは伝わらない。そこで、ハルメク おみせでは「顧客と年齢の近いスタッフを店長として配置し、体の変化やおしゃれの悩みに共感しながら『安心感を与える接客』を重視している」と同氏は説明した。
「スタッフに向けて社販制度を設け、実感のこもった説明がしやすい環境を提供しています。実際に商品を使ったリアルな声をお客様に伝える接客が評価を受け、阪神百貨店の『おもてなしベスト賞』、阪急阪神百貨店の『エクセレントサービスアワード』を受賞するなどといった結果にもつながりました」
着々と出店拡大を続けるハルメク おみせだが、勝谷氏は「単にものを売るだけの場ではお客様に満足していただけない」と強調。既に行っているイベントのテスト開催など、物販以外での接点構築について言及した。
「理想は『ハルメク おみせに来たら、何かしらのイベントをやっている』という状況を作ることです。これまでに、上級シューフィッターによる足と靴のお悩み相談会や専門家によるコスメ相談、街歩きイベントなどを開催してきましたが、ハルメクのコンテンツ力を生かしたカルチャーセンター的な場を併設できないかと模索しています」
勝谷氏いわく、ハルメク おみせの目指す姿は「試す」「つながる」「学ぶ」「集う」「変わる」のすべてを体験できる場だという。「シニア女性を誰も一人にさせない」というキーワードを掲げて取り組む顧客接点の創出。その理想図を最後にこのように語り、勝谷氏はセッションを締めくくった。
「お客様に『今日は何も予定がないけれど、ハルメク おみせに行けば何かしら楽しいことや学びを得られるから行ってみよう』と思ってもらえる。そのような場を今後も各地に増やせるよう、出店拡大を進めていきます」