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ECzine Day 2024 Autumn

2024年8月27日(火)10:00~19:15

日本の魅力発掘に挑戦!越境ECで広がるブランドの可能性

京和傘の老舗・日吉屋の廃業を止めた5代目の経営手腕 通販事業をきっかけにオンオフの海外展開へ

 日本の人口減少や市場縮小にともない、老舗企業が世界に挑戦する動きが見られる。京都府で160年以上にわたって京和傘を作り続ける株式会社日吉屋も、その一つだ。5代目を継いだ同社の代表取締役 西堀耕太郎氏は、海外展開への道を切り拓き、経営を立て直した。その裏には、どのような戦略があるのだろうか。

1997年に手作りで通販事業をスタート 数々の新規事業により業績を改善

 江戸時代後期に創業した京和傘の老舗・日吉屋。1990年代、需要の減少による廃業危機を乗り越え、V字回復を遂げた。160万円まで落ち込んでいた年商は、現在グループ全体で3億3,000万円にまで伸びている。

 その立役者が、妻の実家の家業・日吉屋の5代目を継いだ西堀氏だ。5代目就任前の1997年、まだインターネットが一般的に普及していなかった時代に、日吉屋のホームページを立ち上げ、通販事業を開始した。

「インターネットに興味をもったきっかけは、弟が大学在学中にITベンチャーを立ち上げたことです。また、当時勤めていた和歌山県の新宮市役所に初めてPCが導入され、観光情報の発信などを担当していたため、比較的身近な存在でした。

 その頃のインターネットはまだ黎明期で、回線速度が遅く、現在のような便利なものではありません。それでも、実際に操作してみるとすぐに利便性と将来性を感じ、日吉屋の情報もうまく発信できないかと考えました。先代が『どうせ店をたたむのだから好きにして良い』といってくれたのも、ありがたかったです。最初は、私が週末にボランティアとして掲載する内容の企画や写真撮影などを行い、弟に手伝ってもらいながらホームページを構築しました」

株式会社日吉屋 代表取締役 西堀耕太郎氏
株式会社日吉屋 代表取締役 西堀耕太郎氏

 通販事業とはいえ、現在のECサイトのような「かご」やクレジットカード決済のシステムは未発達な上に導入ハードルが高く、普及していなかった。自社で一から開発するとなると、時間もコストもかかる。そこで、西堀氏はホームページに商品の写真と紹介テキストを掲載し、メールで注文を受け付けることにした。請求書も併せて配送し顧客に商品代を振り込んでもらうか、代金引換で回収するシンプルな仕組みだ。西堀氏は「初めての注文を今でも覚えている」と振り返る。

「東京で舞踊を趣味にされているお客様から、『小道具として京和傘を購入したい』とメールが送られてきました。元々『日常的に京和傘を使用するケースは少なくても何らかの理由で興味をもち、求める人が全国にいるはず』と予想していましたが、実際に注文が入り手応えを感じましたね。始めてから約1年で得られた通販事業の年間売上は、約300万円にのぼります。2000年代初期には企業としての年商が1,000万円を超え、その90%以上を通販事業が占めるまでになりました」

 日吉屋の通販サイトには、立ち上げ当時より英語版のページが設けられていた。西堀氏はワーキングホリデービザを取得してカナダに留学した経験があり、英語でコミュニケーションが取れたからだ。

 その英語力を生かし、同社は2008年から海外の展示会への参加国内外に向けた小売・卸売事業の展開など、オフライン販路の開拓に注力している。さらに、その中で得た海外のネットワークやノウハウを活用し、2012年に海外展開を目指す事業者を支援するコンサルティング事業も開始した。

 こうした数々の新規事業によって、着実に業績を伸ばしてきた日吉屋。コロナ禍を経て、改めて越境ECにも力を注ぐ考えだという。

「メール注文の仕組みから、今でいうECサイトに移行はしていたのですが、コロナ禍にオンラインショップをShopifyで再構築しました。日本語のほかに英語・中国語での表示が可能で、海外からの決済にも柔軟に対応できるようになっています。引き続き展示会に参加して認知を拡大しながら、越境ECを通じた年間売上を3,000万円にまで伸ばしたいです」

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新規顧客を開拓し続ける商材 だからこそ海外展開は必要不可欠

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この記事の著者

ECzine編集部 藤井有生(フジイユウキ)

1997年、香川県高松市生まれ。上智大学文学部新聞学科を卒業。人材会社でインハウスのPMをしながら映画記事の執筆なども経験し、2022年10月に翔泳社に入社。現在はウェブマガジン「ECzine」で編集を担当している。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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