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最初は集客も売上も伸びないのがECの宿命
さて、EC事業を開始したものの売上が上がらない理由は、第1回、第2回でもお伝えしましたが、
- 構想/コンセプトが十分練られていない
- 構想/コンセプトを本気で徹底しようとしていない
- 事業を開始したのに、計画の精度・信頼性にとらわれて実行を躊躇している
などが挙げられます。
構想/コンセプトが徹底できていないにもかかわらず売上が伸びている場合は、値引き、ポイントやクーポン、プレゼントの配布、著名人を起用したPR、広告への投資といった飛び道具の効果、もしくはまぐれでしょう。
飛び道具は、予算があり、構想/コンセプトに影響がない範囲であれば問題ありません。もしも影響が出るのであれば、短期の評価は別として、担当者は身を挺して阻止すべきでしょう。1度ぶれたコンセプトを修正するのは、大きなエネルギーと費用が必要だからです。
構想/コンセプトが十分に練られていなくても、意図的に上記の施策を行えば売上は上がります。ただし、長い目で見れば、継続性、成長、売上・利益が想定どおり伸びず、事業成長が鈍化します。
そもそも、最初からうまくいくEC事業は少ないです。実店舗の場合は、集客できそうな立地を選び、開店日に向けて広告施策などを実施することで、初日に集客や売上のピークを作ります。そして、徐々に集客が落ち着き、ある程度の規模を維持しながらビジネスを行います。
しかし、EC事業などのオンラインビジネスの場合、オープン初日に大きな集客を作るのは危険です。リスクを避けるため、オープンに向けて集客施策を実施するような無理はしません。私自身も痛い目に何度もあってきましたし、いくつもの他社の失敗事例を見てきました(連載後半の回で触れます)。
主なリスクの内容は次のとおりです。
- 品ぞろえや説明不足など、人的準備の不手際で評判を落とす
- システムのリリースや切り替えがうまくいかず予定日までに完了できない
- 初期の脆弱性を狙われ不正アクセスや攻撃を受ける
- リリースしたてのシステムが動かない、不具合が多発する
開設したてのECサイトの集客はゼロです。私の経験上、初期は本当にアクセスがありません。私は、よく「新規のECサイトは、田舎の原っぱのど真ん中にぽつんと路面店を作るようなもの。最初は誰も気づかないし、店の前をとおってくれない状態」と表現します。
ところが、オープンすれば実店舗と同様にすぐに集客ができ、売上が上がるという“EC事業への幻想”をもつ人が少なくありません。私は、事前に社内で初期の予想を説明していたにもかかわらず、売上が上がらず立ち上げ時に大騒動となり、ひどく干渉された経験があります。こうした幻想は、必ず事前に断ち切っておきましょう。
「集客できない」の前に既存リソースを活用できていない
構想/コンセプトの徹底とは別に、やれる施策はあります。既存のビジネスやリソースがある場合は、それをできるだけ利用することです。元々配布しているチラシや実店舗などを通じて情報発信すれば、わざわざ新たな施策を行うより安価に、ターゲットが同じか近い顧客層へアプローチできます。
それすら行わずに、「集客がうまくいっていない」とぼやいているEC担当者をよく見かけます。トップが本気でも、社内の関係者や担当者が重要性に気づかず行動に移せていないのです。
理由としては、
- 関係者に、EC事業を行う意味や本気度が伝わっていない
- 業務が増えるため、関係部署のモチベーションが下がっている
- EC部門にだけ人員配置をして、関連部署にリソースの追加や配慮がされていない
といった点が挙げられます。
私が以前在籍していた企業では、全社の広告にいつもEC事業の記載が忘れられていました。そのため、偶然見つけた際に広告担当者に頭を下げて追加してもらっていました。