Amazonも「脅威」ととらえる中国発ECプレーヤーの動き
世界に目をやれば、Amazonの月あたりのサイト訪問者数は約48億、eBayは約12億(Webretailer調べ)と、米国企業の勢いは変わらずだが、最近は米国内の消費者のECプラットフォーム活用にも変化が生じている。既存プレーヤーの脅威となるのは、中国発の「Temu」や「SHEIN」だ。特にSHEINは、2022年に四半期単位のアプリダウンロード数がAmazonを越え、2023年3Qには前年比70%増を記録するなど急成長している。
両サイトは、流通網の管理を厳格化することにより、低価格とトレンドを抑えた商品展開を両立させており、流行に敏感なZ世代を中心に支持を集めている。また、米国ではインフレの影響により経済的に不安を抱える人が増えていることも関係するだろう。配送日数を差し置いても価格が安い点や、クーポンやタイムセールの通知が頻繁に届くなど、何度もサイトにアクセスしたくなる仕組みも、顧客への浸透を後押ししていると見られる。
Amazonは、こうしたサイトと販売価格を合わせるような措置は講じていないが、20ドル以下のアパレルアイテム出品時の販売手数料引き下げを2024年1月より実施。低価格アイテムの出品者の囲い込みと見られるこうした対抗措置が、今後どのように取られるかは注目だといえる。
TemuとSHEINは、ご存じのとおり日本にも進出している。原材料高騰や円安を起因とする値上げラッシュが影響し、品質を気にしつつも低価格商品を選択する消費者が増えている点を踏まえても、今後のシェア拡大は必至と考えられる。実際、既に国内ではSHEINの利用者数がZOZOTOWNを超え、Temuの利用者も1,500万人超を記録。App Storeのショッピングカテゴリーのランキング上位に両サイトが入るなど、今後の動向が気になる企業も多いだろう。
一方で、低価格での商品提供を実現する裏にある労働問題が問題視されているのも実情だ。SDGsの意識が世の中的に高まっていることから、こうした課題の取り組みに対する透明性も長期的にユーザーを獲得できるかどうかに左右する。今後の動向にも注目したいところだ。
EC開設、進む選択肢の多様化 メリット・デメリットを踏まえた判断を
市場の拡大にともない、EC構築を支援するサービスも多様化している。インフラが整い、中小企業や個人のEC参入ハードルが下がっている点も、市場の継続的な成長を後押ししていることは間違いない。
企業や個人がEC参入を試みる場合、大きく分けて次の二つの選択肢が存在する。
- Amazonや楽天市場のようなECモールに出店(出品)する
- 自社ECサイトを構築する
ECモール出店のメリットは、なんといっても集客、サイト構築、物流などをはじめとする運用支援が充実している点だ。しかし、出店料や販売手数料がかかる点や、モール内の規定によりブランドの個性を発揮しにくいデメリットも存在する。
自社ECサイトは、ECモールの出店料や販売手数料がかからない分、高い利益率を確保できる点に加え、マーケティングやブランディング施策を柔軟度高く行える点がメリットだ。一方で、サイト構築の初期費用負担と構築までに時間を要するほか、オンライン上での知名度を一から獲得する場合は、集客に時間がかかるデメリットが存在している。
双方のメリット・デメリットを踏まえ、近年はたとえばペットやギフトに特化したECモールなど、特定の商品に特化したプラットフォームが誕生している。また、小売を中心販路とする既存商品とは別軸で、オンラインを中心に知名度を上げ、コスト削減と売上アップを両立させるD2Cブランドの動きにも注目だ。
経済産業省の調査によれば、国内BtoC-ECの市場規模は2022年時点で22.7兆円。このうち、食品、生活用品、衣類などの物販系BtoC-ECは約13.2兆円で6割超のシェアを占めている。コロナ禍をきっかけに定着した食品購買や、プレーヤーの増加を踏まえた上で、ケップルでは物販系ECに関連する注目スタートアップを中心にまとめた。ここから、ジャンル別に紹介を進めていく。