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GA4は発展途上 見切りをつけるのはまだ早い
2019年8月にGoogleアナリティクス(ユニバーサルアナリティクス/UA)内に登場した「アプリ+ウェブプロパティ(App+Webプロパティ)」から端を発した、Googleアナリティクス4(GA4)への移行作業。2023年6月30日にはついにUAでの計測が終了し、どの企業もGA4でのデータ活用、分析作業を余儀なくされたが、新たな管理画面の見方や操作方法、分析指標の策定に戸惑いを感じる人も少なくはない。実際に、プリンシプルや似田貝氏のもとにも、日々相談が寄せられているという。
「事業者の方からよくいただくのは、『UAと比べると、解析フレンドリーではなく使いづらい』というお声です。確かに、主軸となる指標が変わったことで分析思想そのものが変化し、活用にハードルがあるように感じるのも理解できます。特に移行期日が決定し、『GA4に移行しなければならない』と義務感に駆られて移行した方ほど、そう感じやすいでしょう」
UAで自社なりの使いやすい方法や分析手法を確立していたにも関わらず、その手順を踏めない。見るべき数字が見られなくなっている。入り口でマイナスな印象を抱いてしまうと、なかなか積極的に使い倒そうという気になれないのも事実だろう。こうした人々に向け、似田貝氏は「GA4の進化の遍歴」を見せてくれた。
「このチャートは、GA4の機能リリース数を月次で計測し、累計値を折れ線グラフにまとめたものです。2020年・2021年の曲線と、2022年・2023年の曲線が離れていることからも、UAの計測停止の時期が見え始めた頃から機能を強化する動きがより加速しているとわかります。
つまり、GA4は進化の途上であり、まだこれから使いやすくなる余地が残されているということです。今の段階で苦手意識を持ちすぎたり、見切りをつけたりしないようにしましょう」
GoogleがGA4を生み出した理由に立ち返ろう
UAで分析作業を円滑に進めていた人にとっては、「なぜこの数字が取れないのか」「既存作業に面倒なステップが増えた」と感じる部分もあるかもしれない。UAで収集していたデータの多くは、GA4でも探索レポートを作成したりカスタムディメンションの設定をしたりして可視化できるものだが、ルーティン業務にこうした「一手間」を加えないといけない状況は、多忙なEC担当者にとってフラストレーションがたまることも想像にたやすい。
だが、ここは一歩引いて冷静に考えてみてほしい。ここまで高度な分析ができるツールを、私たちは今まで基本的に無料で活用できているのだ。いくら世界のITをリードするGoogleとはいえ、単なるボランティアでここまで多彩な機能を有するツールを解放するはずはない。
「GA4の特徴をとらえる上で重要なのは、『Googleは広告事業を主とした企業である』と念頭に置くことです。そもそも計測の概念を変えてまでGA4へ移行した経緯をたどると、スマートフォンの普及をきっかけに加速した『同一人物による複数デバイス利用』や、Cookie規制に行き着きます。
セッション軸で計測するUAでは、アクセスする端末が変わったユーザーの動きまでは追いきれませんでした。実際に、あるECサイトの1年間の顧客データをもとに1人のログインユーザーがアクセスする端末の数(ID)を可視化したところ、複数端末でアクセスしているユーザーが45%いたという結果も存在します。しかし、UAではこれらを『同一ユーザー』と可視化できず、広告の精度が問われていました。そこに加わったのが、GDPR(EU一般データ保護規則)やITP(Intelligent Tracking Prevention)といった個人情報にまつわる規制強化です」