進化し続けるための「ユニファイドコマース」と「コンポーザブルアプローチ」
田丸氏は、全国に約1,400店舗のドラッグストアを展開する株式会社サンドラッグに、2021年11月から執行役員として参画している。それ以前は、アマゾンジャパン、セブン&アイ・ホールディングス、ウォルマート傘下時代の西友にて、ECやOMOなど小売関連のDXを手掛けてきた。
「業務や経営改革、横串を通すオムニチャネルを強みとしています」
セッション冒頭で、同氏はForbes「The 5 Biggest Retail Trends For 2023」を引用し、世界の小売トレンドを5つ挙げた。「チャネルの拡大」「新しい形態の店舗」「リテールメディアネットワーク」「ソーシャルメディアのセンチメントモニタリング」「消費主義の抑制」である。
「店舗の形態は多様化し、より差別化した体験を提供していく流れになっています。事業としてマネタイズしていくため、新たな収益源としてメディア事業に参入するといった、従来の小売の枠におさまらない取り組みも起きています。
対お客様に関しては、SNSを通じて自社だけでなく、競合他社や業界全体に対するお客様の感情をより深く理解し、店舗やブランドのファンに高いロイヤルティーをもたらそうという傾向にあります。SDGsなどの観点からもののサイクルを回すことが、Z世代を中心に支持を集めているのも特徴です」
顧客の感情や行動は随時アップデートされ、テクノロジーは進化していく。従来のスピード感で分析から施策実行までをしていては、手遅れになってしまう。「顧客1人ひとりに対し、短いサイクルでバージョンアップをし続けることが重要だと考えています」と、田丸氏は述べた。
短いサイクルでバージョンアップをし続けるには、それを実現する仕組みを整える必要がある。田丸氏は「ユニファイドコマース」「コンポーザブルアプローチ」の2つを挙げる。
「ユニファイドは、『統合された』という意味です。たとえばカスタマーサービスであれば、SNSでお客様がコメントした際に、ECや店舗など部署を問わず、小売というひとつの組織で対応します。複数の部署でそれぞれ行うよりも1ヵ所に統合したほうが人材も育ちますし、コストカットにもなります。ユニファイドコマースはもはや経営課題だと言えます。
コンポーザブルアプローチはチャネルとデータソースを分離し、マイクロサービスを使用してチャネル間で共通のコマース機能を使用することです。チャネルごとに別々の機能を使用していては、どのチャネルで購入し何をつぶやいているかといったお客様の行動把握が難しいですし、新たな機能追加を行う場合にECでは可能だけれど、他のチャネルは乗り遅れるといったことが起きてしまいます。コンポーザブルアプローチを実現すれば、こうした乖離も防げます」