商品の開発と販促は同時進行
スーパーやコンビニでよく見かけるあの商品は、どうやって生まれたのか。なぜ、人気商品になったのか。『うまいを上手く伝えて売れるを作る驚きの商品開発術』(ダイヤモンド社/近野潤、長田敏希 著)は、そんな疑問に答える。
著者の1人、「きっかけクリエイター」とも呼ばれる近野潤氏は、「セブンプレミアム ゴールド 金のハンバーグ」などの商品開発に携わってきた人物だ。もう1人の著者である長田敏希氏も、クリエイティブディレクターとして、「能登輪島米物語」などのブランディングを支援してきた。
2人は本書で、「商品そのものの企画をしながら、それと同時に、そのよさをどう伝えていくかを考える必要があります(P.47)」としている。
一般的にいえば、社内で商品企画・開発はマーケティング部が、伝達設計は販売販促部が行うといったように、部署ごとに役割がわかれているケースが多いだろう。しかし、本来はこれらが同時に動かなければならないのだという。
差別化ポイントは小さな違い
鈴ノ屋の販売する「きなこ棒」は、この考え方に従って新商品の開発とブランディングに成功した商品の1つだ。同社は、近野氏、長田氏とともに、きなこ棒を独自商品として磨き込み、ブランディングを進めた。その中で、「完全無添加の駄菓子」を目指した。
鈴ノ屋では、きな粉はそれまでも国産の原料を使用していたが、品種を「とよまさり」に限定。特に高級というわけではないが、品種を1つに絞ることで「こだわり」としてアピールできるポイントが生まれた。これが、近野氏と長田氏が考える、「伝達設計を考えながら商品設計を行うという部分(P.66)」だ。
近野氏と長田氏が支援した他の商品でも、たとえば稲庭うどん小川では、リブランディングのために社内でワークショップを実施。その結果、商品を製造する過程で「油を使わない」という他社との違いが見えてきた。そこで、「油不使用」と明記する商品パッケージに変更するなど、差別化ポイントを押し出す戦略に方向転換した。
食品の場合であれば、この「油不使用」のように、他社がやっていない製法が差別化のポイントになります。とりわけ、いまのように健康志向の強い時代には、製法にヘルシーなイメージがあったら、それをしっかり言語化して表記することが差別化につながっていくのです(P.181)
これから新商品を開発しようとしている人は、商品設計の段階で原料・配合・工程に「違い」を見いだせれば、伝達設計が同時に回りだすだろう。既存商品であれば、実は他社と違う点があり、それを消費者にうまく伝えられていない可能性がある。
あなたのブランドの商品やサービスは、どうだろうか。