審査スピードアップで即日配信も可能になった「LINE広告」
──2023年1月に「LINE広告」の審査体制が強化され、出稿までの日数が短縮されたとお聞きしました。変更点を具体的に教えてください。
黒岩 審査体制については、システムの刷新と人員強化を行い、24時間・365日の対応を実現しました。従来は土日祝日や年末年始など、EC事業者の皆さまが「売上を底上げしたい」と思うタイミングに対応しきれていない部分があったのですが、今は約8割の広告が5分以内に審査を完了できるようになっています。
業界の規制や各種関連法規が関係する商材や、業種によってはもう少しお時間をいただいていますが、早いものでは即日配信も実現できるため、「LINE広告は出稿までに時間がかかる」といった先入観を払拭できるアップデートになっていると思います。
──ウェブ広告の施策はスピード感も大切です。「露出強化をしたい」と思い立ってから、速やかに出稿を開始できるのは、EC事業者にとってもメリットが大きいと思います。
黒岩 近年、LTV向上に重きを置くEC事業者も増えていますが、売上を拡大するには変わらず新規顧客に向けたアプローチが大切です。また、認知を獲得したい新興D2Cブランドは、「より多くの人の目に触れる可能性が高い面に出稿する」という視点も欠かせません。
LINE広告は、月間9,500万人(2023年6月末時点)が利用するLINEに加え、1万1,000を超えるアプリメディア(2023年6月時点)に向けて配信ができる「LINE広告ネットワーク」を有しています。LINEを介したコミュニケーションに限らず、スマートフォンを用いた様々なアクションの中で接点を生み出せる点を強みと評価いただけているのか、審査体制を強化した2023年1月以降、LINE広告アカウント数の伸び率はさらに上昇傾向にあります。
──特に増えている業種などはあるのでしょうか。
黒岩 元々、LINE広告は健康食品やコスメを扱う事業者からの需要が高いのですが、審査スピードがアップしたことでより出稿が増えている印象があります。LINEが独自開発した広告クリエイティブ制作を手助けするツール「LINE Creative Lab」を使って広告クリエイティブを自らの手で作成し、出稿して成果を見ながら表現をブラッシュアップするといった素早いPDCAサイクルが回しやすくなったことも、プラスに捉えていただけているようです。
多忙なEC担当者の広告クリエイティブ制作を助ける「LINE Creative Lab」
──EC担当者の中には、1人でサイト更新から広告出稿、SNS運営まで幅広く手掛けているケースも存在します。「LINE Creative Lab」は、そんな方々をどのように手助けしてくれるのでしょうか。
柿崎 「LINE Creative Lab」は、LINE広告のフォーマットに合った画像(静止画・画像(アニメーション))、動画を容易に作成できるツールです。LINE広告のサイズに合わせて既存画像や素材を複数サイズに調整できる「クイックトリミング」、画像とテキストから複数デザインの広告クリエイティブを作成する「自動作成」機能、LINE広告で効果の良い表現を参考にして作成している「テンプレート」などを無料で提供しています。
──テンプレートには、具体的にどのようなものが用意されているのでしょうか。
柿崎 LINE広告・Yahoo!広告が定期的にリリースしている「CREATIVE TREND」に基づき、LINE広告で扱う主要ジャンルで高い成果を上げているビジュアルやキャッチコピーなどを参考に、毎月更新しています。
テンプレートは、自社の訴求したい内容に合わせて背景・文字の色味や画像、キャッチコピーの変更が可能です。そのため、作業時間を節約しながらも着実に成果につながる広告クリエイティブ制作が実現できます。
柿崎 また、画像(アニメーション)を作成する際に活用できるアニメーションエフェクトも複数用意しています。簡単に動きをつけることができるので、ぜひ活用していただければと思います。
健康食品・コスメ・総合通販 業種別「勝ちクリエイティブ」を紹介
──効率性を踏まえ、1つの広告クリエイティブを使い回したいと考える方もいるかと思いますが、やはり媒体ごとにデザインや訴求内容は変えたほうが良いのでしょうか。
相樂 「CREATIVE TREND」を見ると、LINE広告とYahoo!広告でも業種別のトレンドは異なっています。私と柿崎が所属するクリエイティブプランニング室では、2023年の春から「LINE Creative Inspiration」で広告クリエイティブのトレンドや、制作のヒントについての発信強化を行っていますが、まとめる度に日々トレンドが移り変わっていることを実感します。つまり、成果につながる広告出稿には出稿面に集まるユーザーの属性や業種別ごとにユーザーが広告に求めている情報を理解し、トレンドを反映した訴求を行う必要があるといえます。
──EC事業者に関連する業種別のトレンドとして、直近で「おもしろい」と感じたものがあれば教えてください。
相樂 美容・健康食品領域では、商材がスクロールする動きが高い効果を発揮していました。同一の商材画像やイラストが複数個動き続けることにより、視線がそこに集まり、商材やパッケージを印象づけられます。コスメ領域では、UGC画像を分割して配置し、簡易的な動きをつけたものが好評でした。
相樂 また、総合通販・小売の領域ではクーポン風のレイアウトで複数商材を見せるのが効果的です。どれか1つでも「欲しい」と感じたらクリックしていただけるため、ユーザーが普段見慣れたデザインで視覚的にお得感を伝えやすくなります。
豊富なテンプレで静止画からの画像(アニメーション)・動画作成も容易に
──こうしたトレンドを反映した広告クリエイティブも、「LINE Creative Lab」があれば容易にできるということですね。
柿崎 「CREATIVE TREND」内に、「LINE Creative Labのテンプレートはこちら」といった導線を設けています。「このデザインで作成したい」と思ったら、すぐに作業に着手できるため、デザイナーだけでなくECや広告運用の担当者がインスピレーションしたものを自ら形にし、「LINE Creative Lab」からそのまま管理画面に送信して広告を審査に出すといったことも可能です。
──「静止画の素材しか持っていない」という場合でも、「LINE Creative Lab」を使えば画像(アニメーション)や動画が制作できるのでしょうか。
柿崎 静止画素材さえあれば、画像(アニメーション)については10種類のアニメーションエフェクトの中から好きなものを選び、動きをつけられます。動画に関しても、静止画からスライドショーを作成できる「かんたん作成」機能やテンプレートをご用意しているため、動画編集のスキルがなくても出稿を実現可能です。「動画広告って費用対効果が見合うのか」と懐疑的な方も、撮影費用などをかけずにまずチャレンジしていただけたらと思います。
「映え」よりも配信面の特性理解で成果は変わる
──手持ちの商品画像からでもLINE広告出稿を始めやすいとわかりましたが、「映える画像がなければ成果につながらないのでは」と考えるEC事業者もいるかと思います。元々ある素材を活用して、運用効率と成果を高めている事例があれば教えてください。
柿崎 ある女性向けファッション企業では、商品画像のレイアウトやトリミングでバリエーションを作成し、効果の高いものに絞り込んでさらなる出稿につなげるといった取り組みを行っていました。こうしたバリエーションも、1つ画像を作り「複製機能」を活用すれば、数クリックで実現可能です。
──時間を要さずにA/Bテストもできますね。LINE広告は配信面のバリエーションも特徴の1つですが、EC事業者から需要の高い配信面とそれぞれの特徴をお聞かせください。
相樂 LINE広告で最もメジャーな配信面は、LINEのトーク画面を開いた際に上部に表示される「トークリスト」です。この面は、画像のデザインで視認性を担保しつつ、2行で表示されることを意識したタイトルづけが成果を左右します。画像(アニメーション)のフォーマットで出稿する場合は、商材画像を回転・スライドさせたり、図形やイラストを拡大・縮小したりといった動きをつけるのが効果的です。
「LINE NEWS」は、ニュースなど記事コンテンツの間に並んでも馴染むデザイン・画像活用を意識しましょう。新聞風のデザインや、UGC画像を取り入れた広告クリエイティブの成果が上がりやすい傾向にあります。
また、最近は縦型動画のフォーマットがSNSなどで浸透したこともあり、「LINE VOOM」の配信面も好評です。「LINE VOOM」を閲覧するユーザーは、気に入らない動画が出てくるとすぐにスワイプして次の動画を再生してしまうため、冒頭でキャッチーな画像やキャッチコピーを見せたり、音声なしで再生しても内容理解ができるテロップを表示したり、飽きないシーン展開や内容作りをしたりといった工夫が必要になります。
効率的なトレンド把握、スムーズな施策実施を手助けしたい
──ここまで、LINE広告のクリエイティブにおけるトレンドや課題解決法を教えていただきましたが、最後に本記事を見て「LINE広告に興味を持った」という方に向けてメッセージをお願いします。
黒岩 少人数で運営していて常に業務に追われているEC事業者の中には、LINE広告に対して「配信面が多く、どこで何を訴求したらいいのかわからないから手つかず」という方もいるのではないかと思います。
私たちとしては、月間9,500万人が利用するLINEの強みを活かし、こうした事業者のビジネス成長にも貢献したいと考えています。そのため、今後は管理画面内に「LINE Creative Lab」を組み込むなど、よりスピーディーにかつ簡単に広告クリエイティブの作成から審査、出稿までができる体制を整えていく予定です。情報だけでなく、直感的に手を動かすだけでアクションを起こせる環境構築、機能追加が大事だと捉えていますので、その点に注力して今後もLINE広告のサービスを磨き上げます。
相樂 「広告クリエイティブ」と聞くと、デザイン力が問われると思い、気負いして後回しにした結果、手が回らなくなってしまう方もいるかもしれませんが、LINE広告では最新トレンドを把握し、すぐに形にできる環境を整えています。「まずはテンプレート通りに」といったところからでも構わないので、ぜひ「LINE Creative Lab」を触ってみるところから始めてみていただけるとうれしいです。
柿崎 私も、クリエイティブ制作の部分で立ち止まってほしくはないと思っています。
LINE広告は画像(アニメーション)の入稿形式がAPNGであったり、他の広告面にはない画像サイズであったりと、「追加制作するのは工数がもったいない」と感じる方もいたかもしれません。しかし、「LINE Creative Lab」を活用する事業者の中には、既存素材を取り込み、数クリックでアニメーションを付与するだけで大きな成果につながっている事例もあります。「これだけでこんなに変わるのか」と驚く結果につながる可能性もあるため、ぜひ一度体験してみていただけたらと思います。