定価を崩してでも「メガ割」に出品するセラーたち
「Qoo10」が日本に進出したのは2010年のことだ。元々は、韓国の大手ショッピングモールサイト「Gmarket」だったが、2012年に名称をQoo10へ変更。2018年には、eBayがQoo10の日本事業を買収した。
2018年に1,000万人だった会員数は、2023年時点で2,300万人に。K-POPの流行もあり、Z世代の女子を中心に会員数を伸ばしているが、実は40代以上のユーザーも少なくない。
「韓流ブームが始まってから、今年で20年ともいわれています。『冬のソナタ』(2003年に日本で放送されたペ・ヨンジュン主演の韓国ドラマ)が流行したとき20代だった消費者が、現在は40代です。初期の韓流ブームで韓国の文化にハマった消費者たちも、韓国からの輸入商品を多く扱うQoo10を利用してくれています」(吉田氏)
そんなQoo10の知名度を一気に押し上げたのが、「メガ割」と呼ばれる2019年から始まった大型セールだ。年に4回行われ、セール期間中には20%割引のクーポンが9枚配布される。公式ショップでは割引価格で販売しないブランドも、メガ割だけは「定価を崩してでも出品する」という。
Qoo10のユーザー層は40代以上までいるものの、10代~20代の若年層の割合が高い。比較的安価な商品を取り揃えているQoo10だが、若年層にとっては少し高額で手が出しづらい商品もある。それが、メガ割ならお得に手に入る。普段は接点がない顧客に、商品の魅力を伝えるチャンスになるのだ。
割引価格で販売しても利益が出ないようにも思えるが、「メガ割への出品を繰り返しているセラーは、セール期間以外の定価での売上も上がる傾向がある」と米川氏は話す。
当然、メガ割に向けたセラーたちの準備も万全だ。メガ割期間中には、注文数が最大で40倍に跳ね上がるケースもある。受注したにも関わらず配送できなければ、顧客がブランドに対しネガティブな印象を持ってしまう。そのため出品するセラーは、国内外問わず在庫を確保しておかなければならない。韓国など国外のセラーであれば、事前に日本へ在庫を輸送しておき、大量の注文に耐えられる体制を整える。
なお、Qoo10の運営陣もメガ割終了後に必ず全社アンケートを実施し、改善を続けている。
「積極的にQoo10を利用している社員も多くいます。そのため、消費者としてメガ割へ参加後、『エラーが出て使いづらかった』など正直な感想をアンケートに書いてくれます。営業担当者であれば、セラーからの声を拾ってきてくれます」(米川氏)
吉田氏もアンケートに改善点を書き込んだことがあるというが、モールとセラーが一丸となって顧客満足度の向上に取り組む点が、Qoo10の大きな特徴だろう。