辛口ブームの定着で顧客の需要も拡大
──新パッケージの選定にAIを活用されていますが、そもそも、なぜ「お好みソース 大人の辛口」のパッケージを変えることにしたのでしょうか。
土屋(オタフクソース) 当社では、2015年より「お好みソース 大人の辛口」を販売しています。数十年前から辛口ブームが繰り返されており、それが一過性ではなく生活者の食生活に定着してきていると感じていました。
そこで、大人の辛口をシリーズ化して焼そばソースでも辛口の商品を作り、2022年9月に発売することになりました。同じタイミングで、お好みソース 大人の辛口も、シリーズとして統一感のあるパッケージへリニューアルすることにしたんです。
──どの商品も、辛口は一定の人気がありますよね。ハマる人も多そうです。
土屋 お好みソース 大人の辛口は、繰り返し買ってくださる方が多い商品です。お好みソースのバリエーション商品の中では、特にリピート率が高いんです。一度試してもらえると、きっとファンになってもらえる。そのためにも、「辛口であることが一目でわかる」パッケージで、顧客接点を増やしたいと思っていました。
パッケージを変えたら売上が1.3倍に
──実際には、AIを活用してどのようにパッケージを選定したのですか。
土屋 今回は、デザイン選定での活用だったため、パッケージ候補は制作会社に作成してもらっています。正直、難しい作業は特に無く、AIの評価システムにデザインのデータを流し込むと数分で項目ごとのポイント数が出ます。条件設定やデータのアップロードの時間を含めても、30分程度で結果が得られました。
評価項目は20個ほど。「色味が良い」「新しい・ユニーク」「美味しそう」などです。簡単といっても、評価項目の設定自体はAIシステムを利用する当社側が行います。AIで2つまでデザインの候補を絞り込み、最後は公式SNSでファンの方々に投票してもらいました。
──AIを活用してパッケージを選定したことで、具体的な成果はありましたか。
土屋 パッケージを変更してから半年間の売上が1.3倍になりました。営業担当の社員も、再度商談のチャンスが得られています。「AIでパッケージを選んだ」ことも踏まえて、今までとは少し違った営業資料になりました。取引先から「AI評価とはどういうものなの?」という質問もいただくみたいで、1つの商談のネタにもなっていますね。
パッケージを決めるまでの評価期間が短縮されたのも良かったです。デザインの候補ができてから決定までの間に、生活者へのアンケートやグループインタビューを実施すると通常1ヵ月はかかります。業務の効率化も課題だったので、評価時間が大幅に短縮されたのは大きいです。