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ECzine Day 2024 Autumn

2024年8月27日(火)10:00~19:15

アパレルEC しくじらないための心得

責任の所在の明確化が店舗・EC双方に生むメリット

 店舗主軸のビジネスから、ECシフト・チャネル拡大の動きが見られるアパレル業界。しかし、誤った認識を持ったまま進めてもうまくいくことはありません。本連載では、ECディレクターの深地雅也さんがアパレルのEC化を進める上で注意すべきポイントをご紹介。しくじらないための心得を学びましょう。第3回のテーマは、「責任の所在を明確化するメリット」についてです。 ※本記事は、2022年12月25日刊行の『季刊ECzine vol.23』に掲載したものです。

組織の連携でなくせる機会損失

 前回は、ECの販売員活用における「貢献度を計る難しさ」についてお伝えしましたが、今回は推進時に存在するもうひとつの難しさ「責任の所在」についてご紹介したいと思います。EC担当者の中には販売や卸営業出身など、アパレルの商習慣に詳しい方も多くいらっしゃるでしょう。こうした方々は「どうすれば数字が伸びるか」という課題に対し、「何をしたら良いか」をよく理解されていると思いますが、「組織の形」によって問題が発生するケースは多々あります。

 もちろん、店舗・ECといった小売の部分だけでなく卸、マーケティング、広報、人事など、企業の構造上部署をわけることは当然ですが、それが原因で生まれてしまうのが「業務における責任の所在問題」です。たとえば、販売員のウェブ活用として1人ひとりがコーディネート画像を投稿し、EC売上アップを目指すとしましょう。すると、勤務時間中に販売員に「Instagram・コーディネートサービスのアカウント運用」という業務が発生します。具体的には、店舗近隣でのコーディネート撮影や画像加工、投稿する際の文面の作成・投稿に加え、事前にコーディネートを検討する時間も必要ですね。こうした一連の作業をする上で販売員は当然ながら多くの時間を使いますが、店舗とECで部署がわかれているとEC側に指示を出す権限はありません。あくまで店舗を統括する部署への「お願い」となってしまいます。

 正確に言えば、Instagram・コーディネートサービスのアカウント運用はECだけでなく、店頭送客の強化にもつながります。「店頭では今何が人気で、どのようなイベント開催があるのか」「館の優待はどうか」といった店舗ごとのお知らせはもちろんですが、何より販売員個人の魅力を伝えることで「この店舗に行きたい」というお客様を増やすことができるはずです。また、普段から検索エンジンのデータを確認していると、「ブランド名 店舗」や「ブランド名 ( 地域名)」といったキーワードは頻出しており、店舗で商品を確認したいという需要が見受けられます。お客様が商品を検討する際、近隣の店舗で働く販売員のコンテンツが受け皿になることは言うまでもありません。

 しかし、販売員にファンが増えればそこからEC利用促進の流れも生まれるため、ブランドにとっては良いこと尽くしですが、事業部ごとに見ると折り合いがつかないことはしばしばあります。連携が取れない場合、SNS上での発信だけでなく、EC上で使える画像素材も充実しません。昨今、大手アパレルECの特集ページはシーズン別の人気販売員コーディネート特集が豊富ですが、これもSNS投稿された画像から作成しているケースが多いです。ブランドによっては、YouTubeで販売員の抜き打ちコーデや商品検討会の様子を公開していることもありますが、こうした動画もEC内に埋め込めばコンテンツとして活用できます。こうした機会も、連携しない(できない)だけで見逃されてしまうのです。

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この記事の著者

深地雅也(フカジ マサヤ)

StylePicks代表。アパレル・ファッションに特化したECサイト構築・運用ディレクション、オウンドメディア構築、販促企画などがメイン事業。ラグジュアリーブランドのリテール・ホールセール営業を経て独立。フリーランスとしてアパレルECの運用代行からスタートし、現在まで60ブランド程度の運用に携わる。ODM・...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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