コマースとの連携が進むSNSは、今や単なる顧客接点や交流を創出するツールとしての活用に留まらず、認知度向上から購入にまで誘導するポテンシャルを持ち得るものと言える。さまざまなSNSが存在する中でも、日本で現在注目すべきはTikTokだと言えるだろう。ユーザー層の拡大や利用時間の増加にともない、企業・ブランドはどのようなアカウント運用・コンテンツ訴求を行い、成果を生み出しているのだろうか。これまでさまざまな企業・ブランドのTikTok運用をサポートし、Z世代に特化したマーケティング研究室「lookey(ルーキー)」の運営も手掛けるテテマーチ株式会社 取締役/ブランドプロデューサーの三島悠太さんに、自社の魅力をアピールして販売につなげるポイントやEC事業者のTikTok活用のこれからについて話を聞いた。
今こそ知っておきたい TikTokの個性と特徴
Instagramの企業アカウント運用支援から事業を開始し、Twitter、TikTokと支援の幅を広げてきたテテマーチ。各SNSの違いを熟知する同社には、日々さまざまな相談が寄せられているが、中でもとくに近年増えているのがTikTok活用に関するものだ。主要SNSを網羅し、複数のアカウントを運用する企業も増える中で、三島さんは「TikTok活用に取り組む場合、まずはそのほかのSNSとの違いを理解していただくところから始めてほしい」と語る。
「タイムラインの特性から、Instagramはブランディングに適したストック型のSNS、Twitterはフロー型でユーザーと双方向でコミュニケーションを取るSNSと位置づけられています。企業・ブランド、商品に対する愛や、興味関心でつながるコミュニティ形成が成果を生み出す基盤となるため、どちらもまずはフォロワー獲得を目指し、そこからエンゲージメントを高めていくことが必要です」
これに対し、「TikTokは、そもそもフォロワー獲得がそれほど重要ではない」と説明する三島さん。プラットフォームが設けるおすすめ機能により、フォロー外のアカウントによる投稿もランダムに表示されるTikTokは「フロー型の極み」であり、「つながりの有無に関係なく、おもしろいコンテンツであれば投稿の拡散、再生数や保存数の増加を狙うことができる点は、ほかのSNSにない特徴」と補足する。
そんなTikTokは、近年ユーザーの利用動向にも変化が生じている。
「data.ai社の調査によると、2022年2月時点のInstagram、Twitterの月次平均利用時間は約6時間であるのに対し、TikTokは約28時間にも及んでいます。SHIBUYA109 lab.が実施した『Z世代のSNSによる消費行動に関する意識調査』では、トレンドを知る目的でTikTokを利用するユーザーが42.3%いることもわかっており、単なる暇つぶしだけでなく、知識欲を満たし自分をアップデートするための活用が伸びていることがうかがえます」
偶発的な出会いを生み、一度アプリを立ち上げたら長時間見続けてしまう魅力を放つTikTokが持つ独特な世界観について、三島氏は次のように続ける。
「フォロワーが2桁でも100万回再生突破といったように、ほかのSNSでは見られないようなバズりが生じるのも、TikTokの特徴です。1日で無名のクリエイターが突如脚光を浴びる、いわば『クリエイタードリーム』がいくつも巻き起こっています」
ブーム初頭の印象から、TikTokは「踊ってみた」動画が主流であり、企業アカウントでの運用、活用方法が見出だせないと考える人もいるだろう。三島さんは「こうした動画のブームはすでに去りつつあり、今は日常のいち場面を切り取ったVlogやドラマ仕立てのものなど、バリエーションが広がっている」と説明した上で、このように語った。
「TikTokは、コメント文化にも特徴があります。とくに『ツッコミを入れたくなるもの』へのエンゲージメント率が高く、コメントのアクティブ率もおすすめ表示のアルゴリズムで加味されるため、コンテンツ投稿時に意識すると良いでしょう。
中には『フォローされていない、興味を持っていないユーザーにおすすめされると嫌われてしまうのでは』と懸念する方もいるかもしれませんが、TikTokはランダム性や新たな出会いがある点がユーザーに支持されています。こうした世界観にフィットしていれば、ユーザーにも自然と受け入れられるため、企業・ブランドや商品との出会いを増やしたい方にはぜひ活用をおすすめしたいSNSです」