インドネシアへの越境ECのコツをカケモチに聞く
━━まずインドネシア市場の魅力について教えてください。
柳沢 人口は、約2億7,000万人で世界第4位です。多くの日本人にとって、インドネシアは東南アジアのどこかの国という印象がまだまだ強いと思うのですが、実はGDPも2020年時点ですでに16位(日本は3位)で、オランダ(17位)やスイス(18位)を抜いており、2050年には日本を抜くとも言われています。ジャカルタ市内のショッピングモールでランチを食べると1,000円超、夕食もオシャレなレストランに行けばひとり3,000円は普通に超えます。
ただし、インドネシア全体で見ると平均月収はまだまだ3万円程度で、1食150円〜200円の屋台でお昼を済ませる人も少なくありません。ジャカルタ市内を訪れるとわかるのですが、豪華なタワーマンションと昔ながらの古びた家が混在していて、急激な経済発展に伴う貧富の差を感じます。
比較対象としてタイがよくあがります。タイは日本での知名度は高いですが、インドネシアはタイの2倍以上の市場規模を誇ります。また、実はタイは高齢化社会にすでに入りつつあるので、この先を考えるとインドネシアの方が魅力的だと考えています。
インドネシアについて、30歳未満の人口比率が約50%という点も魅力のひとつです。つまり1億人以上が若者だということになります。若年層が圧倒的に多くて、ショッピングモールではお年寄りを見かけることが少ないです。日本の高度経済成長期と同じような人口ボーナスの状態にあり、それが2030年まで続くと言われています。コロナ禍の影響もあって、EC利用も非常に増えています。
━━日本企業もすでにインドネシアに約1,800社も進出しているようですね。
柳沢 そうですね。インドネシアは民主主義国家ですし、政治自体は比較的安定しています。進出する日系企業にとっても安心かもしれません。国民の90%近くがイスラム教で、実は私もイスラム教に改宗したのですが、とても穏やかな性格の人たちが多いです。
ジャカルタのショッピングモールには多くの日本食店が入っているので、ジャカルタに進出された日系企業の駐在員の方々も安心してご飯を食べられると思います。GOJEK(ゴジェック)やグラブ(Grab)といったアプリを使って、日本食を自宅までデリバリーすることもできます。日本食も良いですが、インドネシア料理には日本人にも親しみやすいナシゴレン(炒飯)やミーゴレン(焼きそば)があるので、インドネシアを訪れた際は是非地元のレストランでの食事を楽しんでほしいです。
━━ジャカルタでは日本人は食べ物で困ることはないんですね。言語はどうでしょうか?
柳沢 インドネシアでは、インドネシア語が公用語になっています。都市部のオフィスワーカーには英語を話す人もいますが、それほど多いわけではありません。また、あまり知られていないのですが、実はインドネシアは日本語を学習している人が世界で2番目に多い国です。日本のアニメや漫画の影響を受けて日本語学習を始める人も少なくないと聞いています。ただ、日本への留学生数や日本で就労している外国人という切り口でみると、インドネシア人の存在感はまだまだです。そこは課題だと感じています。
━━日本企業が越境ECでインドネシアを狙う時の注意点は?
柳沢 商品選定が非常に重要になります。越境ECの場合、時間と費用の観点で国内ECよりも競争力が落ちます。たとえばですが、トイレットペーパーとかオムツのような日用品で勝負してしまうと、当然ローカルマーケットで安い商品があるので、それで十分だという話になってしまいます。配達に時間がかかっても、費用が割高になっても、越境ECで日本から購入しないと手に入らないから注文する。そういった商品を選定して勝負していく必要があります。
一方、日本在住のインドネシア人も約6万人います。彼らがインドネシアに戻って、日本で日々購入していたモノが懐かしくなって越境ECで購入するという購買行動に目をつけても面白いかもしれません。いずれにしても、日本で売れているからきっとインドネシアでも売れるだろうという短絡的な発想でチャレンジしないことをおすすめします。
また、マーケットが大きいからといって、インドネシアに進出してもすぐに売上につながるわけではありません。そういう企業様には「とりあえずテストマーケティング的に越境ECをしませんか?」というお話をしています。越境ECに成功すれば本格的なインドネシア進出の判断材料のひとつになりますし、売れなければ商品を変えたり、ローカライズしたりしてPDCAを回していきながら改善していきます。最悪ニーズがなくて撤退したとしても、インドネシアに支社を立てて撤退するダメージと比較したら軽微なものです。