スマートフォンユーザーに動画でエモーショナルなアプローチを
60代前後の男女をターゲットとしたアパレル展開を行うクロコダイル。2020年6月にリリースした自社アプリは、約2年で30万ダウンロードを突破。スマートフォンからのEC購入比率は70%を超えるなど、「シニア層はEC化が難しい」といった先入観を覆す数字を次々と記録している。
「顧客起点」での施策展開を意識する同ブランドは、定期的にNPS(Net Promoter Score)を計測したり、アンケートを聴取したりする中で「洋服をどう着こなしたら良いのか」といった悩みが顧客から多く寄せられる点に着目した。実店舗では販売員がこうした悩みに直接寄り添うことができるが、ECで買い物をする顧客に対してはどういったコンテンツ訴求が効果的なのか。検討の末、「縦型ショート動画でのスタイリング提案に行き着いた」と長尾さんは語る。
「顧客の課題を的確に解決し、かつエモーショナルに訴求するには動画が最適だろうと考え、2020年からさまざまな施策に着手しました。2021年4月に実施したインタラクティブ動画コマースは、顧客にも馴染み深いテレビ通販を意識したUI/UX、横長の画角で配信しましたが、蓋を開けてみると7割がスマートフォンをわざわざ横向きにして視聴していたのです。
もちろん、インタラクティブ動画コマース自体も反響があり、課題解決型のコンテンツのひとつとして有用性を感じました。しかし、さまざまな顧客の課題に寄り添いながら自社の成果につなげるには、訴求内容のバリエーションを増やす必要があります。多くの顧客が利用しているスマートフォンで効果的な訴求をする方法と自社ドメインでの実運用を踏まえた結果、Fireworkを活用した縦型ショート動画の活用に至りました」
こうして、2022年4月に「クロコダイル(CROCODILE)公式通販サイト」内に設けられた動画コンテンツの「スタイリングムービー」では、ひとつの動画内で3商品をピックアップ。30秒で全身コーディネートを紹介しており、動画からダイレクトに購入することが可能となっている。
「現在、動画は月に10本公開しています。2020年から2021年にかけて動画施策をトライアルで実施した際に、アップロードから4週間ほどで再生数が鈍化し始めることがわかりました。そのため掲載期間は4週間と決め、2週間に一度、5本ずつ動画を入れ替えるようにしています。
動画から商品ページへの遷移率は4%超、掲載期間内の商品総受注割合は約15%となっており、反響もまずまずです。動画を見てすぐに購入いただけなかった場合も、リターゲティングやMAなどの仕組みを裏側で整えているため、長期的に売上を押し上げる施策になると考えています。こうした仕組みを構築できる点も、ストック動画の良いところです」