ユーザー視点のA/Bテストでコンバージョン、売上、顧客体験向上をかなえる
コンバージョン最適化(CRO)を事業の軸とし、CROプラットフォームと運用支援を提供するSprocket。Webサイトにおけるコミュニケーションがどれだけ適切に行われているのかプラットフォーム内で分析・改善を実施しているが、「最適化を行い、リアルタイム接客におけるパーソナライゼーションを追求することは、当社にとっても大きなテーマとなっている」と深田氏は語る。
「ツール導入後にせっかく使いかたを覚えても、ROI(投資利益率)を高める以前に挫折してしまう企業が多くなっています。そこで当社は創業以来、ツールを導入して完了ではなく、価値提供にコミットするベンダーとして『運用代行』を行い、分析・改善のサイクルをしっかりと回せるようにしてきました」(深田氏)
その過程でより成果につながる良い施策を実施するために、同社は頻繁にA/Bテストを実施。その数は5万回以上にも上ると言う。結果、業界別の成功パターンに関する知見が蓄積され、それらをバリューとして提供できることが同社の強みとなっている。実際、2020年度にCROプラットフォーム「Sprocket」を活用したECサイトのROIは、平均目標値871%のところ、実績平均1,565%と予想を大きく上回る成果を記録している。
度重なるA/Bテストで得た知見や業界別のノウハウについて、深田氏は3つの事例を挙げながら説明した。
1. ハンバーガーメニューは意外と使われていない
「ユーザーの行動は多様化しており、Web関連の仕事をしている人とは大きな乖離が生じている」と指摘する深田氏。たとえば、モバイルでWebサイトを閲覧している人の行動を観察すると、想像以上にハンバーガーメニューをクリックしたことがないユーザーが多いと言う。
同社では、このような結果を踏まえて「ユーザーはハンバーガーメニューの存在を知らないのでは」と仮説を立て、該当箇所をクリックすると商品一覧が見える旨をアナウンスしたポップアップを設置。すると、設置前とくらべて125%の購入完了改善率を記録した。
「『ハンバーガーメニューを知らないユーザーなんて本当にいるのか』という意見もありましたが、あえて試してみたところ、大きな成果につながりました。この発見によりユーザー理解が深まっただけでなく、『ユーザー目線の親切なWebサイト』という印象づけにも成功しています」(深田氏)
2. 「ちょっとした不安」でカゴ落ちするユーザーは多い
SprocketはA/Bテストから、購入検討時にカゴ落ちするユーザーの一定数が「送料」や「支払い方法」、「お届け日」など、FAQを見ればわかるポイントでつまずいていることを発見。そこで、カート画面内で「注文についてご不明な点はございますか」と記載し、疑問の解消を試みたところ、購入完了改善率が109%を記録した。
3. ログイン時にもたつくとユーザーは離脱する
深田氏は、「ログイン時のエラーは離脱しやすいポイントであるため、対策が必要」と語る。ある事例では、ポップアップで「パスワードを忘れた方」「メールアドレスを忘れた方」と記載したリンクを表示し、スムーズな遷移をうながしたところ、ログイン時の離脱が減少。購入完了改善率は120%を記録した。
「事例からもわかるように、ユーザーはさまざまな場所で離脱しています。しかし、ユーザー視点で体験を設計し、ちょっとした工夫を施して離脱の要因となるフリクションを潰していけば、ユーザーの理解・発見をかなえることが可能です。すると、コンバージョン、売上、顧客体験向上の『一石三鳥』が実現します」(深田氏)
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4つのフリクションパターンを理解し、Webサイトでも接客を再現
なお、深田氏によるとフリクションにも大きく4つのパターンが存在すると言う。
- コンテンツの存在に気づいていない:そもそも気づいていないため、重要な内容でも見てもらえない
- コンテンツを見ようと思っていない:読みにくさなどが原因で拾い読みされているため、見落としが生じる
- コンテンツに到達できない:コンテンツの存在に気づいていても、どこから遷移するかがわかっていない
- コンテンツの内容が理解できていない:概念的もしくは専門用語が羅列されているなどの理由で、内容がわからない
「Webサイトでコンバージョンを生み出すには、『ユーザーは思いがけないところで離脱している』と自覚しなければなりません。フリクションを除外して、快適な利用体験を創出することが大切です」(深田氏)
さらに深田氏は、「Webサイト=セルフセービスの前提はもう成立しない」と問題提起した。つまり、これからの時代は提案型のWebサイトを作り上げる必要があるということだ。具体的な施策案として、3つの事例が紹介された。
1. トップページにコンテンツへの分岐点を提示
商品点数やカテゴリー、コンテンツが多く、さまざまな行き先が存在するWebサイトにお勧めなのが、このシナリオだ。トップページのポップアップで「今日は何をお探しですか」と語りかけ、行き先を複数提示。ユーザーがたどり着きたい情報にスムーズにリーチできるようにしたことで、購入完了改善率が116%に向上している。
2. 「有効な機能」をタイミングに合わせて提案
複数ページを遷移しても求めているコンテンツにたどり着いていないと見られるユーザーには、「絞り込み検索機能」、「お気に入り」、「店頭取置」など便利な機能の提案を行う。実装されているにもかかわらず、使われていない機能が存在する場合は、さりげなく認知をうながすことが大切だ。
3. アプリのアピールや機能訴求を行う
アプリをリリースしていても、ユーザーが存在や使いかた、機能を理解していないケースは少なくない。そこでアプリをアピールするポップアップを実装。機能訴求を行うパターンAとダウンロードキャンペーンを周知するパターンBでA/Bテストを行った結果、前者の施策が高い効果を上げた。
「コロナ禍により、多様なユーザーがインターネットを活用するようになりました。そのため、セルフサービス型のWebサイトで成果を上げるのが年々厳しくなりつつあります。『デジタルネイテイブ』と呼ばれるZ世代も、自分に合ったコンテンツがレコメンドされる状況に慣れているため、『情報を探してもらう』のではなく『情報を提供する』ことが大切です。つまり、接客型への移行が望ましいと言えます」(深田氏)
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ユーザーはいつ提案を聞いてくれる? タイミングを見定めたシナリオの描きかた
積極的な提案が求められるとは言え、アクションの数を増やすだけでは成果につながらない。むしろ、頻発することで嫌悪感を抱かれないよう注意が必要だ。そこで求められるのがリアル店舗の接客同様、「タイミングを見計らうこと」である。
しかし、具体的にどのようなタイミングにどのような情報を提供すれば良いのだろうか。深田氏は、ここで3つの事例を紹介した。
1. 検索結果のソート方法を案内する
商品検索後に表示件数が多すぎる場合に、「ソート機能」の提案を実施。目的の商品を見つけやすい状況を作り、購入完了改善率を112%に押し上げた。
2. 困っていそうなユーザーにチャットを案内する
気軽に質問ができる機能として近年注目を集めるチャットだが、「事例先企業では実際に利用するユーザーが数%程度であった」と、深田氏は振り返る。普及を図るには、「ユーザーの動きを見て、挙動が止まっている場合に『何かお困りですか?』とポップアップ表示するなどのアプローチがお勧め」だと言う。同事例では、結果的にチャット起動率が128%に上昇、購入完了改善率も116%を記録した。
3. 購入者にレビューを依頼する
レビューの依頼についても、タイミングが大切だ。ベストなタイミングのひとつとして挙げられるのが、購入後に再来訪した直後である。トップページに再来訪したユーザーに対して、「前回購入した商品はいかがでしたか?」などのポップアップを表示し、レビュー投稿を依頼。同事例では、レビューの書きかたやポイント付与などのメリットを提示したことで、レビュー投稿完了改善率を138%にまで上昇させた。
Sprocketでは、Web接客のシナリオを作り上げる際にリアル店舗のスタッフへヒアリングを実施し、意見を反映している。リアル店舗のスタッフは声がけの内容やタイミングはもちろんのこと、人によっては声をかける角度にまでこだわりや工夫を施しており、「アプローチ方法で効果が大きく変わることを体感している貴重な存在」と深田氏は語る。
「リアル店舗で行われている接客は、非常に高度なコミュニケーションと言えます。Web上でこのレベルを完全に再現するのは難しいとしても、接客ツールで近づけていくことは可能です」(深田氏)
こうした考えに基づき、Sprocketではリアル店舗のスタッフによるコミュニケーションを参考にした「マルチステップWeb接客」を実施している。同接客は、「声をかける」「質問を投げかける」「奥まで案内する」の3ステップを動画の入ったポップアップで再現するものだ。
「こうしたステップを踏むと、ユーザーは『気づき』を得ることができ、もともと購入するつもりがなかった商品の購入につながる可能性が生まれます。
ポップアップの表記内容は、ニーズの自覚の有無によっても受け取りかたが変わりますが、自覚がない状態でもユーザー視点で情報提供を行えば『気の利く提案』と評価され、リピートにつながるでしょう。反対に企業視点で行う一方的な情報提供は『売り込み』と受け取られてしまうため、注意が必要です。
ニーズを自覚するユーザーに向けては、何らかのつまずきを解消することが良質な顧客体験の提供につながります。しかし、企業視点ではこうした施策実施もマイナスに映る可能性があるため、気をつけなくてはなりません。ぜひポイントを押さえ、ユーザー視点で最適なアプローチやシナリオを考えましょう」(深田氏)
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1,000人が選ぶポップアップのワースト体験トップ5とは
ここで深田氏は余談と前置きをしつつ、1,000人に行った「ポップアップで受けた悪い体験」についての調査結果を紹介した。40%前後のユーザーが回答したワースト5の結果に共通するのは、「×ボタンが押しづらいこと」である。
「ここで注意すべきは、ポップアップの存在そのものが不満なのではなく、『消したいタイミングで消すことができない』という挙動が問題であるという点です。ユーザーが不要と感じた際にすぐにポップアップを閉じることができる状態を作り上げる。つまり、引き際が肝心であるということです。これが非常に重要なポイントと言えるでしょう」(深田氏)
深田氏は、シナリオ設計時の考えかたについても言及した。使い勝手を考慮することは大切だが、「ユーザーは『自分のことは自分で解決したい』という気持ちも持ち合わせているため、手取り足取り提案をすることはあまり望ましくない。先回りをして、自己解決ができるユーザーに『物足りない』と思われることのない体験を提供しつつ、Webサイト上での振る舞いかたがわからないユーザーに対しては、適切な解消の手立てを提案する。こうしたシナリオを描くことが、多くのユーザーに快適な体験の提供につながると言える。
最後に深田氏は、最適なWeb接客と顧客体験の提供を実現できるツールとしてCROプラットフォーム「Sprocket」を改めて紹介。マルチステップWeb接客やMA、CDP、他ツールを用いたデータ連携によるきめ細やかなターゲティングとパーソナライズに加え、導入後のサポートについてもアピールした上で、このように語りセッションを締めくくった。
「当社は『どうすればユーザーにより良い価値を提供できるのか』、『ROIをより良いものにできるのか』と考え、サポートを繰り返してきました。5万回ものA/Bテストから示唆を得た課題解決シナリオを提供できる点を強みとし、最適化の代行と成果でしっかりとコミットできる座組みには自信を持っています。コンバージョンの改善はもちろんのこと、今後もクライアント企業様に向け、長期的なサポートを行っていきます」(深田氏)
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