規模はコロナ禍前の半分に スペインで開催「MWC 2022」
モバイル業界最大級の「MWC 2022(MWC)」は、2022年2月28日から3月3日にかけてスペイン・バルセロナで開催されました。2022年の同イベントをリアルで開催する旨は、主催者のGSM Association(GSMA)から2021年7月に発表されていました。MWCは例年宿の確保が難しく、私は毎年イベントの最終日に翌年の開催日程が発表されると同時に宿を探すようにしていましたが、今回の発表は「2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会(東京2020)」の開催を目前とし、新型コロナウイルスの第5波も間近に迫っていたタイミング。動向が見えない中で「リアル開催」と聞いても身近に感じることができず、行くかどうかの判断を先延ばしにした結果、現地には行かないことを決めました。
オミクロン株の流行を乗り越え、GSMAは無事にMWCを開催。参加者は並行して開催されたベンチャーイベント「4YFN」との合算で6万1,000人、183の国と地域から来場があり、出展者数は1,900、パビリオンを構えたのは46ヵ国と発表されていました。スペインの地元紙によると、経済効果は2億4,000万ユーロだそうです。コロナ禍前の「MWC 2019」は、参加者10万7,000人、出展者数2,400、経済効果は4億7,300万ユーロであったことを踏まえると、概ね半分程度の規模になっていることがうかがえます。
今年のイベントテーマは「Connectivity Unleashed」。日本語に訳すと「コネクティビティを解き放て」といったところでしょうか。端末ベンダーはSamsung、Huawei、Xiaomi、Oppoなどの主要企業が揃いましたが、日本のソニーは出展を控えました。ネットワーク機器ベンダーも、Ericsson、Nokia、Huaweiと大手が揃いましたが、多くはオンラインで事前に説明会を開くなど、ハイブリッドを想定したプログラムを組んでいたようです。
スマートフォンの領域では、MWC直前にSamsungが最新のフラッグシップ「Samsung Galaxy S22」シリーズを発表しました。最上位の「Galaxy S22 Ultra」は6.8インチの画面、4眼のメインカメラ、バッテリー容量5000mAh、そしてスタイラスペンがついています。
一時期は同社に迫る勢いだったHuaweiは、アメリカによる制裁でGoogle Playを使うことができず、半導体チップの供給も絶たれつつあります。同社のコンシューマー事業部はこのところ「シームレスAIライフ」としてスマートフォン以外の端末をプッシュしており、MWCでもオンラインで発表会を開催。Windowsノートパソコン「HUAWEI MateBook X Pro」や初のプリンターなどを紹介しました。
MWCの主役は、通信インフラベンダーです。端末のような派手さはないものの、多くの商談が行われる場として機能しています。通信インフラ分野はここ数年、ハードウェアと一体化してきたRAN(無線アクセスネットワーク)を仮想化やクラウド技術活用で分離する動き「Open RAN」が活発です。専業ベンチャーも生まれ、既存ベンダーの動きにも注目が集まっています。これらを「Cloud RAN」と称して推進するEricssonは、今回サステナビリティを前面に打ち出していました。数々の製品の中心は省電力化、省スペース化をうたう5G向けRAN製品。同社によると、2021年末時点で5Gサブスクリプション数は6億6,000万人、2027年には44億人になる予想とのことです。
私にとってコロナ禍の影響を最初に身近に感じたのが、開催12日前にキャンセルになった2020年のMWCでした。同イベントがカムバックしたことで、新型コロナウイルスと我々の関係が新しい段階に入ったように感じています。