東京商工リサーチは、2021年度上半期(4-9月)の「旅行業の倒産動向」調査結果を発表した。
2021年度上半期(4-9月)の旅行業倒産(負債1,000万円以上)は16件(前年同期比166.6%)となった。前年同期を上回ったのは4年ぶり。このうち、新型コロナ関連倒産は15件(構成比93.7%)で、コロナ禍の長期化が旅行業に深刻な打撃を与えていることがわかった。
原因別に見ると、「販売不振」の14件が最多(前年同期比366.6%)で、旅行業倒産の約9割(構成 比87.5%)を占めた。コロナ禍の業況悪化を原因とした旅行業者が大部分を占める。このほか、「他社倒産の余波」「事業上の失敗」が各1件。 『不況型倒産』(既往のシワ寄せ+販売不振+売掛金等回収難)も14件で、旅行業倒産の約9割(構成比87.5%)を占めた。 また、コロナ禍では国内旅行よりも海外旅行のほうが壊滅的な状況で、海外旅行に特化した業者の倒産が散発している。
新型コロナ感染拡大は、入出国規制や緊急事態宣言の発令で国内外の人流を抑制し、旅行業界に大打撃を与えている。政府は実質無利子・無担保融資やコロナ特例リスケのほか、持続化給付金や雇用調整助成金の特例措置など支援策を打ち出した。
加えて、2020年7月には「GoToトラベル」キャンペーンを開始した。だが、相次ぐ新型コロナ感染拡大で、同キャンペーンは同年12月に停止したままだ。国内でも人流抑制が長引き、旅行だけでなくビジネス関係でもリモートワークの浸透で出張が大幅に減少している。また、起死回生に期待していた東京五輪・パラリンピックは無観客の開催で、大手旅行会社も軒並み赤字決算に陥り、早期・希望退職や本社売却などで生き残りを図っている。
東京商工リサーチ(TSR)が8月に実施したアンケートでは、旅行業の約4割(構成比38.2%)が「コロナ禍の収束が長引いた場合、"廃業"を検討する可能性がある」と回答している。
東京商工リサーチの集計では、2020年に廃業した旅行業者は過去10年間で最多の158社にのぼる。より厳しい経営環境となった2021年は、これを上回る可能性も出ている。国土交通大臣は、5日の就任会見で「GoToトラベル」再開を示唆したが、業界からは入出国制限の早期緩和を求める声も根強い。