ディノス・セシールとブレインパッドは、通販ブランド「セシール」のオンラインショップにて、ダイナミックプライシングの実用化に向けた取り組みを推進したことを発表。
ダイナミックプライシングとは、同一の商品やサービスの価格を需要と供給のバランスから、収益の最大化を動的価格設定や変動料金制により実現する技術のこと。
セシールでは、これまで、熟練した担当者のノウハウに基づき価格変更(値引き)のタイミングや値引き率などを設定していたが、場合によっては適切に需要を捉えきれずに在庫が残るという課題があり、その解決に向けてダイナミックプライシングの手法に着目した。
世の中には自動的にダイナミックプライシングを実施できるツール類も存在しているが、ホテルの宿泊費や航空券などのチケット料金に特化したものが多い。加えてアパレル業界では、商品の独自性が強くトレンドも加味しなければならないため、SKU単位での需要予測が必要となるなど、既存のツールでは対応が難しかった。そこでセシールでは、自社サイトおよびアパレル業界特有の制約条件を加味したダイナミックプライシング実現のためには独自にモデルを構築するほうが良いと考え、ブレインパッドがその開発を担当した。
ブレインパッドは、まずダイナミックプライシングの実現に向けて必要なデータを準備するところから着手。セシールとして整備していなかったデータは、ブレインパッド開発のRtoasterやGoogle Analyticsを用いて過去の購買履歴データ等を調査し、その結果を元にデータを補完・推計し独自のモデル構築に活かした。
そして、商品ページへの訪問者数を予測するモデル、商品ページ訪問者の購買確率を予測するモデルの2つの予測モデルの構築と、この2つのモデルと在庫数を用いて最適な販売価格を求める数理最適化アルゴリズムの開発に成功し、一定の効果創出が見込めることを確認した。
ディノス・セシール セシールマーケティング部 藤田満氏は次のようにコメントしている。
「ブレインパッドには、アパレル業界や当社特有の要因・条件などを加味したダイナミックプライシングアルゴリズムを開発していただきました。ダイナミックプライシングに使用するデータは、「セシール」が蓄積してきたデータをできるだけ使用しながら補完・推定いただき、またアルゴリズムの精度向上のための新たなデータ収集に関するアドバイスをいただきました。
今回の取り組みは収益向上という観点だけでなく、お客様をはじめ仕入先・生産者といったさまざまなステークホルダーにとって望ましいものにしたいという想いがありました。そのため在庫低減だけを目標とするのではなく、より上流の原材料調達や生産量の最適化に繋げること、社会課題である衣服ロスへいかに貢献できるかが重要であると考えました。
マーケティングツール等の提供に留まらず、データ活用を通じた経営課題・社会課題解決に共に取り組めるブレインパッドは魅力的なパートナーだと感じています。
今後、アパレル業界での先進的な取り組みとしてダイナミックプライシングの実用化に向けた挑戦を進めるに際し、ブレインパッドのデータ活用に関する知見・ノウハウをふまえたサポートに期待しています」
今後、セシールとブレインパッドは、この2つのモデルと数理最適化アルゴリズムを元に実地検証を行い、モデルの改善・多機能化、システム化を進め、実用化に向けた取り組みを段階的に進めていく考え。