矢野経済研究所は、国内の宅配水市場およびその周辺市場を調査。
市場概況
2018年度の宅配水の市場規模は、末端金額ベース(エンドユーザー販売金額)で前年度比104.1%の1,385億円と拡大。市成長期が東日本大震災の発生による水需要の高まりと合わさったことで、ミネラルウォーター市場を凌ぐ伸び率で急拡大。東日本大震災が発生した2011年を挟み、2009年度から2013年度までの5年間の年平均成長率(CAGR)は17.0%で拡大し、2014年度から2018年度までの年平均成長率は6.3%と減少したものの、ここ10年間で宅配水市場は2.5倍に急成長した。
市場成長のきっかけは東日本大震災発生における水道水への不安や備蓄意識の高まりであったが、その中で温水と冷水を使い分ける事ができる簡便性や重たい水を店舗から運ばなくてよい利便性など、ミネラルウォーターとは異なるベネフィットを消費者に訴求することができ、水が生活水として生活に定着する中で宅配水のビジネスモデルがマッチしたことが大きかったと分析している。
消費者の宅配水利用経験
本調査で全国の20代から50代以上の男女約2.5万人に対し、宅配水の利用経験について尋ねたところ、「現在利用している」という回答は5.8%、「以前に利用していたが現在は利用していない」が7.3%となり、宅配水の利用経験者は13.1%となっている。一方、「宅配水の存在を知らなかったので利用したことはない」という回答が19.0%であることから、この消費者層に対して、宅配水のサービスを如何に認知させるかが課題となる。
将来展望
将来展望について、矢野経済研究所は次のように行っている。
成長率が鈍化してきたと言われる宅配水市場ではあるが、今後は地方都市など伸びしろが多いエリアやシニア層への開拓など、新規顧客獲得への深耕が進むことで、当面は市場拡大が続いていく見込みである。但し、解約者数の増加を抑える事が出来ずに顧客数が純減した企業も出てくる他、コスト削減とラストワンマイルの配送体制の安定化など、取り巻く環境は厳しさを増しており、宅配水市場は新たな局面を迎えている。
また、以前は活発であった新規参入も近年ではごく少数となっている一方で、市場から撤退する動きも見られる。今後は宅配水事業からの撤退や淘汰される企業も増え、リターナブル方式とワンウェイ方式の上位企業、又は法人向けに特化した企業など、ある程度の数に集約されていく見通しである。