東京商工リサーチはの発表によると、2015年度(2015年4月-2016年3月)の通信販売・訪問販売小売業の倒産は74件で、調査を開始した2009年度以降では2014年度(59件)を上回り、年度ベースでは過去最多になった。
負債総額は167億4600万円で、前年度の50億9400万円から3.2倍増に膨らんだ。負債10億円以上の大型倒産が2件(前年度ゼロ)発生したことで、1件当たりの平均負債額が2億2600万円(前年度比162.7%増、前年度8600万円)に増加した。
業種別倒産、インテリア用品や家電販売などが増加
2015年度の通信販売・訪問販売小売業の倒産をみると、インテリア用品や美術工芸品など「その他」が最多の26件。次いで、アパレル関連などの「衣服・身の回り品小売」が22件、衣食住にわたる各種商品を扱う「各種商品小売」が14件で、家電などの「機械器具小売」は8件と急増ぶりが目立った。
形態別では、企業の解体・消滅である破産が69件で、全体の9割を占めた。これに対し、再建型の民事再生法は2件で、業績不振に陥った企業の再建が難しいことを物語った。原因別では、販売不振(業績不振)が49件。次いで、他社倒産の余波が8件、事業上の失敗が7件、既往のシワ寄せ(赤字累積)が4件の順だった。
従業員数別では、5人未満が58件になり、小規模事業者の倒産が全体の約8割を占めている。また、2010年度以降に設立された事業者は20件で、設立から日が浅い5年以内の新規事業者が約3割となった。
裾野の広がりと競争の激化
2015年度の通信販売・訪問販売小売業の倒産件数が調査開始以来で最多になった要因には、スマートフォンやパソコン経由の取引拡大を背景に、中小企業のネット通販への参入など裾野の拡大が過当競争に拍車をかけていることが挙げられる。
通販事業は人手が少なくても、個人でも事業の立ち上げが可能な一方で、消費者の嗜好変化や評判に敏感に左右される面が強い。同業他社との差別化などの「強み」がなければ淘汰されやすく、そのスピードが速くなっている。
倒産事例をみると、円安による輸入品などのコスト上昇から、価格面での競争力を喪失して企業体力が消耗したケースもみられた。景気動向によっては先行き懸念から、個人消費の節約志向が強まる可能性があり、小規模企業を中心に経営環境がより厳しさを増すことも危惧され、今後の動向が注目される。