矢野経済研究所は、国内のEC決済サービス市場を調査し、現況、参入企業の動向、および将来展望を明らかにした。同調査結果の詳細は、次のとおり。
市場概況
EC市場の拡大や、公金領域などにおけるオンライン決済サービス利用拡大を背景として、大手決済代行業者を中心にEC決済サービス取扱高は順調に増加している。コロナ禍において、これまで対面(リアル)取引でのみ事業を展開していた小売事業者や飲食事業者などが、購買チャネルをオンラインにも設けるため、EC事業に参入するケースが多くみられる。さらに、特定業種向けのEC決済サービスを提供する動きもある。教育、保険、レッスン・習い事、学会・セミナー、士業などの役務分野における事業者の集金目的としての導入拡大もみられ、加えて、BtoB(企業間)領域や対面(リアル)取引、オムニチャネルに関するEC決済サービスの提供も拡大している。
こうした要因などを背景に、2021年度のEC決済サービス市場(EC決済サービス提供事業者の取扱高ベース)を23兆1,099億円(前年度比118.6%)と推計し、2022年度は27兆5,367億円(同119.2%)となる見込みである。
注目トピック
分割払いへの対応を進める後払い決済サービス
BtoC(企業対消費者)領域の後払い決済サービス(BNPL : Buy Now, Pay Later)市場(後払い決済サービス提供事業者の取扱高ベース)は堅調に拡大しており、2021年度は1兆820億円と推計。
後払い決済サービスでは、分割払いの提供により利用者の利便性向上を図っている。また、加盟店に対して決済単価の向上などを通じて売上拡大を支援する動きがみられる。
今後、長期的な分割払いへの対応が広がるなどして、分割払いを選択しやすい環境が一層整備されると考える。後払い決済サービスを用いて、現在よりも高単価の商品を購入する動きが進み、取扱高の拡大につながるとみられる。同時に、取引の幅が広がると考えられるため、後払い決済サービス提供事業者には、分割払いにおける与信のノウハウを蓄積することが求められると考える。
利用環境の拡大や、決済単価の向上などを背景に、後払い決済サービス市場は、2026年度に約2兆円の水準まで拡大すると予測する。
将来展望
EC決済サービス市場は、EC市場の裾野拡大に加え、公金領域などにおけるオンライン化の進展や、BtoB領域やオムニチャネル・オフライン決済などの対象領域の拡大が進むことから、2026年度には約40兆円の水準まで拡大すると予測。
今後、コロナ禍で減少した旅行・レジャーなどの分野の消費が回復し、長期的にはテクノロジーの活用を通じてBtoC EC市場が拡大するとともに、EC決済サービス市場も伸長していくとみられる。また、決済代行サービスの提供対象は、BtoC EC市場に留まらず、公金領域・対面(リアル)取引・オムニチャネル・BtoBなどの幅広い領域へと広がっており、今後もさらに増加し続けると予測する。加えて、決済機能以外に付加価値のあるサービスを提供するため、DX支援をはじめ事業領域を拡大する動きが進んでいくと考える。
調査概要
- 調査期間:2022年12月~2023年2月
- 調査対象:ECサイト向けの決済サービス提供事業者および関連事業者
- 調査方法:同社専門研究員による直接面談(オンライン含む)ならびに文献調査併用