矢野経済研究所は、2022年度の国内食品通販市場を調査し、市場動向、参入企業動向、将来展望を明らかにした。
市場概況
2021年度の国内食品通販市場規模は、小売金額ベースで前年度比2.9%増の4兆4,434億円となった。前年度の新型コロナウイルス感染拡大による特需(巣ごもり需要)が発生した反動減が懸念されたが、2021年度もコロナ禍での営業時間短縮や行動制限が続き、食品通販に対する需要は高止まりが続いた結果、続伸となった。
ただ、2020年度とは異なるトレンドもみられた。2020年度は緊急事態宣言が発出された2020年4〜6月を中心に、生活必需品のまとめ買いや家飲みの需要増加から、米や飲料、乾麺、レトルト食品などのストック型商品や酒類が売上を伸ばす傾向がみられた。しかし、2021年度ではそうした特需は沈静化し、在宅時間を充実させるために、普段より高品質なグルメ商品やスイーツを通販でお取り寄せして楽しむといった消費が拡大。これに合わせて、新規参入事業者が急増したことも、食品通販市場の拡大につながったと考える。
注目トピック
食品ギフトの拡大
従来、“食品ギフト”といえば、化粧箱に入ったゼリーや羊羹などの菓子類を中元歳暮などの進物として贈るということが一般的だったが、近年、普段より“ちょっといいもの”や“グルメ商品”を、お世話になった人や親族などに贈るといった、食品ギフトの需要が拡大している。
2020年のコロナ禍以降、特にシニア層を中心に、外食や旅行を控えて自宅で食事をとる機会が大幅に増加した。しかし、普段の食事だけでは飽きもくるため、グルメな(評判の高い)おかずを通販でお取り寄せし、自宅で楽しむという消費行動が加速した。コロナ禍で飲食店も休業や営業時間短縮などの営業的制約を余儀なくされたため、これまで通販に取り組んでこなかった有名店・人気店も通販での食品販売に取り組むようになり、食品通販市場にグルメ商品が増えたことも追い風になったとみられる。そして、自分自身でお取り寄せするだけではなく、自分で食べて美味しかった商品をお世話になった人や両親、友人・知人などに“贈る”という需要の増加につながっている。
将来展望
2022年度もコロナ禍の収束はいまだ見えない状況ではあるものの、行動制限は解除されていることで、過去2年間の特需の反動減の兆しがみられる。また、新規参入も前年度に比べてやや落ち着いているほか、既存の通信販売事業者においても物価やエネルギーコストの上昇などにともない、通信販売事業の収益確保に向けて販促費を絞っており、コロナ禍で特に好調に推移してきた高単価な食品に関してはやや逆風となっている。
値上げで消費者の節約志向が強まっていることもあり、お得感のある商品の需要は底堅いものの、2022年度の食品通販市場規模は前年度比2.4%減の4兆3,374億円と縮小に転じると予測する。
調査概要
- 調査期間:2022年7月~8月
- 調査対象:通信販売事業者、食品関連企業、生協、食品小売事業者、食品卸など
- 調査方法:同社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、アンケート調査、電話による取材、ならびに文献調査併用