コロナ禍やウクライナ情勢などが絡み合い原材料・部品の不足、調達価格の高騰が続くなか、東京商工リサーチ(TSR)は企業活動への影響に関するアンケート調査を実施した。
なお、同調査では資本金1億円以上を大企業、1億円未満(個人企業等を含む)を中小企業と定義している。
世界的な原材料不足による商品・サービスの生産・販売に必要となる原材料や部品の調達遅れ 74.3%が「生じている」
Q1.世界的な原材料不足にともない、貴社の商品・サービスの生産・販売に関して、必要となる原材料や部品の調達遅れは生じているか?(択一回答)
最多は、調達遅れが「生じており、昨年より悪化している」の40.9%(6,230社中、2,551社)。また、「昨年と変わらず生じている」は24.9%(1,555社)、「生じているが、昨年に比べて正常化しつつある」は8.4%(529社)だった。これらを合計した「調達遅れが生じている」は74.3%にのぼった。
「生じている」と回答した企業を業種別で分析すると(業種中分類、回答母数20以上)、構成比がもっとも高かったのは、自動車整備業で100%(20社中、20社)。次いで、電気機械器具製造業95.7%(140社中、134社)など、90%以上は8業種に及んだ。
調達遅れが発生した企業の原材料や部品の円滑な調達に向けた対応策 「調達先の分散」が約半数、「国内回帰」は3.1%
Q2.Q1で「生じており、昨年より悪化している」、「昨年と変わらず生じている」、「生じては いるが、昨年に比べて正常化しつつある」と回答した方に伺います。原材料や部品の円滑な調達 に向けて、現在どのような対応策を取っている(取る予定)ですか?(複数回答)
Q2.Q1で「生じており、昨年より悪化している」、「昨年と変わらず生じている」、「生じてはいるが、昨年に比べて正常化しつつある」と回答した人は、原材料や部品の円滑な調達に向けて、現在どのような対応策を取っている(取る予定)か?(複数回答) 前問で、調達遅れが「生じている」とした企業のうち、4,352社から回答を得た。
最多は、「調達先の分散」の46.6%(2,032社)。以下、「在庫の積み増し」の43.6%(1,900社)、「代替的な原材料、部品への切り替え」の36.7%(1,599社)と続く。
また、「生産拠点の変更」の回答も目立ち、「国内回帰」は3.1%(135社)、「国内回帰以外」3.6%(159社)だった。
一方、「対策は取っていない」は14.3%(625社)。このうち、大企業は11.2%(624社中、70社)、中小企業は14.8%(3,728社中、555社)で3ポイント以上の開きがあった。
世界的な原油・原材料価格の高騰による調達コスト増加の影響を 「調達コストが増加」8割超
Q3.世界的な原油・原材料価格の高騰によって、貴社は調達コスト増加の影響を受けているか?(択一回答)
「影響を受けている」が80.8%(6,375社中、5,155社)、「現時点で受けていないが、今後影響が見込まれる」が9.8%(630社)で、合計90.7%の企業が調達コストの増加に言及した。規模別では、調達コストの増加に言及した企業は、大企業91.0%(956社中、870社)、中小企業90.6%(5,419社中、4,915社)で、ほとんど差はなかった。
原油・原材料の高騰にともなうコスト増 約5割が「価格転嫁できていない」
Q4.Q3で「影響を受けている」と回答された方に伺います。原油・原材料の高騰にともなうコスト増のうち、何割を価格転嫁できているか?
「転嫁できていない」は48.5%(3,899社中、1,892社)とほぼ半数に達した。一方、「10割」(全額転嫁)は5.5%(215社)にとどまった。
規模別では、「転嫁できていない」は大企業が46.5%(485社中、226社)に対し、中小企業は48.7%(3,414社中、1,666社)だった。
「転嫁できていない」と回答した企業を産業別でみると、受託開発ソフトウェアや情報提供サービスが含まれる「情報通信業」は81.4%(81社中、66社)。役務提供の業種は、価格転嫁が難しいと推測される。
一方、「卸売業」は31.7%(928社中、295社)、「製造業」は41.1%(1,420社、585社)で、BtoBが主体の業種では価格転嫁が進んでいる。
調査概要
- 調査期間:2022年8月1日〜9日
- 調査方法:インターネット
- 有効回答数:6,375社