新型コロナウイルスの感染拡大を背景とした供給制約やロシアのウクライナ侵攻などにより、原材料価格や、輸送費などに影響をおよぼす原油価格の高騰が続くなか、コストアップを受けた企業で製商品の値上げの動きが相次いでいる。
これを受け、帝国データバンクは、企業の今後1年の値上げ動向についてアンケートを行った。同調査結果の概要は、次のとおり。
企業の64.7%が主要製商品・商材、サービスの値上げを実施済・予定
主要製商品・商材、サービスの値上げ動向についてたずねたところ、3割の企業で「2021年10月〜2022年3月の間にすでに値上げした」(32.7%)と回答した(複数回答、以下同)。また「2022年4月に値上げした/する予定」は25.7%、5月に値上げを行う企業は11.1%、6月は7.6%となるなど、今後も値上げが続く様子がうかがえる。総じてみると、2022年4月以降1年以内で値上げしたもしくはする予定の企業は43.2%に。また、過去半年間ですでに値上げを行った企業および今後1年以内で値上げする予定の企業の割合は64.7%となっている。
一方で、「値上げしたいが、できない」企業は16.4%に。企業からは、受注産業などでは競合がおり、値上げすると競合に負けてしまうといった、値上げによる顧客離れを恐れている様子がうかがえる。
「飲食料品・飼料製造」の8割超が値上げ実施・予定、川下産業に影響の恐れ
すでに値上げをした企業の割合を業種別にみると、2021年ごろから価格の高騰がみられる鋼材などの「鉄鋼・非鉄・鉱業」は 59.8%と全体(32.7%)を27.1ポイント上回っている。また、「化学品製造」(55.6%)も5割台で続いている。
他方、今後1年以内で値上げを行う企業について、「飲食料品・飼料製造」は73.1%と突出して高く、2022年7月~9月でも2割超の企業が値上げを予定。特に、「飲食料品・飼料製造」および「化学品製造」ではすでに値上げを行った企業および今後1年以内で値上げする予定の企業割合は8割超となり、川下産業に影響を及ぼす可能性があるという。
一方で、『運輸・倉庫』などでは失注につながる懸念などを理由に値上げが進んでおらず、今後も値上げ予定の企業が限られる。特に『運輸・倉庫』では「値上げしたいが、できない」企業は30.9%と全国(16.4%)を14.5ポイント上回っており、価格転嫁が進んでいない状況にある。
「小売」では37.9%の企業が値上げを実施済み、全体を5.2ポイント上回る
小売業や個人向けサービス業を含む「個人消費関連」をみると、企業の43.2%が2022年4月以降1年以内で値上げをした、もしくはする予定。なかでも生活必需品を含め人々の生活にすぐに結びつく製品を扱う『小売』において、すでに値上げを行った企業は37.9%と全体(32.7%)を5.2ポイント上回った。一方、値上げしたいができない企業は9.7%で全体(16.4%)より6.7ポイント低くなっている。企業からは、原油・原材料価格の高騰により製商品を値上げせざるを得なくなったことを示す声が寄せられた。
調査概要
- 調査期間:2022年4月1日〜5日
- 調査方法:インターネット調査
- 有効回答企業数:1,855社