『小さい会社のウェブマーケティング必勝法』はECの本ではありません
こんにちは、編集部のワダです。2021年10月15日、『「未経験・低予算・独学」でホームページリニューアルから始める小さい会社のウェブマーケティング必勝法』(森野誠之/翔泳社)という本が、ECzine Digital Firstシリーズから刊行となりました。SNSなどでも反響あり、反応してくださった皆さん、誠にありがとうございます。
皆さんのご反響を見ていると、本のタイトルにもある「小さい会社」関連の方々のお役に立てることもありそうで、よかったよかった、たくさん売れると良いですね……。以上、解散!というつもりだったのですが。気づいてしまいました。あれ、この本、ECzineのシリーズから出てるのに、この本、ECのことぜんぜん書かれてなくないですか?
第3章に「ホームページ内に販売機能(オンラインショップ)を入れたい人へのアドバイス」という項がかろうじてありますけど、
読者の方がメーカー企業にお勤めで、従来卸売のみだったところを、直接販売(メーカー直販)を始めたいという場合は、相当な覚悟が必要だと言わざるをえません。
実際にモノが売れ、ビジネスとして成立するか、また、あなたの会社がビジネスとして回していけるかは別問題です。
生半可な気持ちでECを始めてしまうとうまくいかないどころか損失を被る可能性もある
めちゃECに対してネガティブじゃないですか。ECに夢持ってる若者が読んだら、挫折しちゃうかもしれませんよ。ネコのロゴを外さなきゃだわ。いったい誰、この本の編集したの……ってわたしでした。
おかしいな、いちおう事業部の企画会議も通ってるんだけど、とくにそのへん、ツッコまれなかった気が……。そうか、ECzineシリーズだから、ECzineの編集長がシリーズに入れていいって判断したならそれで良いのか。つまりわたしが決めたわけですね(いまさら)。
ではなぜ、ECzine編集部でこの本をつくることになったのか。ひとことで言うと、著者が森野さんだからですかねぇ。本をつくることになった経緯を振り返りながら、ご説明したいと思います。
ECzine編集部が本をつくることについて書くときわたしが書くこと
翔泳社の編集者は、ものすごくざっくり言うと、本業で書籍をつくる人か、本業でウェブメディアを運営する人かに二分できます。ECzineはじめ、「zine」を運営している編集部は後者で、本業はウェブです。書籍を制作する場合は、「翔泳社デジタルファースト」というシリーズでつくるのを基本にしています。
「翔泳社デジタルファースト」とは、
翔泳社の各Webメディア(CodeZine、EnterpriseZine、Biz/Zine、MarkeZine、ECzine、その他)と連動したオリジナルコンテンツを、オンデマンド印刷(POD)や電子書籍を中心にさまざまな形式で展開していく書籍シリーズ
だそうです。
ウェブメディアで何回か連載していただき、それをまとめ編集して、Epub化してリリースする、というのが通常の制作フローになっています。過去記事は、無料の会員登録をしていただければ全部読めるものが多いのですが、電子書籍化するにあたっては、再構成したり原稿や図を追加したりと、手が加わっていますし、Kindleあたりにダウンロードしてお手元においていただければ、まとめていつでも読んでいただけるというメリットもあるかと思います。
そういえば、『小さい会社のウェブマーケティング必勝法』の企画会議では、ECがテーマでないことよりも、「え、書き下ろし?」とそちらに驚かれたような気がします。「そうですが、何か?」みたいに答えたと思うのですが、そういえばウェブ連載をまとめるのが基本のつくりかたで、書き下ろしはイレギュラーなチャレンジングでした。こういう前提条件をすっ飛ばしていることが多々ある人間のようでして、本当に申し訳ありません。
実は、『小さい会社のウェブマーケティング必勝法』著者の森野さんには、ECzine初期の頃からたくさんご執筆いただいている(過去記事一覧)のですが、そちらをまとめるという話にはなりませんでした。森野さんが本として書きたかったものが、別にあったからです。
本を出したいと言われるとちょっと戸惑う理由
そもそものきっかけは、森野さんから「本を出したい」と持ちかけていただいたと記憶しています。ここから裏を取らずにけっこう記憶で書きます。森野さん、違ったらごめんなさい。
最初の感想ですか? 「インプレスさんあたりで、通常の本で出せばいいのに……」と思った気がします。
なぜって、前述のとおりわたしたちはEpubが基本スタイルですし、紙にするにしてもプリントオンデマンドで、リアル本屋さんに平積みになる、というのがほとんどないシリーズだからです。カバーや帯がかかり、紙も厳選してつくり、リアル本屋さんに並ぶってやっぱり良いですよ。しかしながらその体裁にするには、ある程度ページ数が必要になるため、すべての企画に合致しないことから、ライトなデジタルファーストシリーズがつくられたわけですが……。
というようなことを森野さんにも伝えたのですが、このような条件であっても、ECzine Digital Firstシリーズから、でも紙の本を出したいということでしたので、「ま、森野さんだし。1冊一緒にやるか」と決意するに至りました。結局のところ、長年一緒にECzineをやってきてくれた人だから、何かしらの形には仕上がるでしょ、と思えたのが大きいです。
「まるで朝礼の校長先生のお話です」というフィードバック
はじめに「どういうことが書きたいですか?」というヒアリングと、使えるところがあったら書き起こして本文に使うつもりで、打ち合わせをしました。何度目かの打ち合わせ後、森野さんが「だいたいこれで全部です」と言い切った際に、わたしが(多少キレ気味に)フィードバックしたのは「これじゃまるで校長先生の朝礼です、説教くさいです。テクニック的な要素の追加をお願いします」でした。
その後、森野さんが頑張ってくれたので今の200ページの本があります。第6章「ウェブマーケティングのPDCAを回す② コンテンツ改善を継続する」のGAのところとか、その結晶的なアレですよね……。「調べればわかるよね」と著者が思うことを、お金を払って書籍を買ってくださった読者様がお調べになる手間を省くために、著者は書くのですよ。
その後、引用していたウェブサイトがいくつかなくなったり(官公庁なのに!)、紹介している書籍のタイトルが微妙に変わったりと、デジタルの利便性を恨むようなことが続きながらも、罵り合うこともない、素晴らしい進行ができました(普通?)。
なんやかや、200ページになったゲラ刷りを紙で(PDFをiPadでも読んだけど。赤字はApple pencilを使ってAcrobatで入れたけど)通しで読むと、しみじみするものです。「そうか、森野さんはこういうことを一生懸命やってきた人生だったんだなぁ」と感慨深かったです。とくに1冊目の本というのは、その人となりを表現しているものだと思います。その割に、表紙をブラウンにしなくてすみませんでした。
ふたたび『小さい会社のウェブマーケティング必勝法』にECのことがぜんぜん書かれてない件
しみじみしたものの、ECのことが書かれていない本がECzine Digital FirstからECzine Digital Firstシリーズから刊行となったのは由々しきことには変わりありません。森野さんには、ウェブのECzineのほうで、これからもEC業界の発展のために身を粉にして記事を書いていただこうと思います。徳島に逃げられると思ったら大間違いですからね。
さて、ECzine編集部としては、2022年度もデジタルファーストで本をつくる可能性は高いと思います(会社の方針が変わったらすみません)。こんな編集者ですが、一緒にやりたいという方がいらっしゃればお待ちしております。企画が通りやすくなる合言葉は、『小さい会社のウェブマーケティング必勝法』の4,649ページあたりに書いてあります。
なお、本をつくるのがどんなにたいへんだったかは、森野さんに聞いてみてください。てへぺろ。