オンラインチャネル依存による集客のリスクを考える
コロナ禍を乗り越えたEC事業者が、これから意識すべきである共通点についてお話するこの連載。前回の記事では、サプライヤー依存からの脱却について触れました。今回は「オンライン販売依存からの脱却」について解説します。
ECを運営する事業者は、ほとんどの集客をオンラインで行われているかと思います。インターネットと言えば、もはや人々の生活に欠かせないインフラなので、インターネットに依存していること自体はとくにおかしいことではありません。「道路や電気、ガス、水道に依存するな!」と言われても意味が分かりませんよね。インターネットもすでにそのステージにまで到達していると言えるでしょう。
しかし、オンラインとオフラインの集客を比較した際に、オンラインが絶対に勝てないポイントがあります。それが「体験」です。体験の重要度は日に日に増しており、このままいくとオンラインのみで集客し続けることはひとつのリスクになりかねないのです。
私たちが売るのは「商品」ではなく「体験」
これまで私たちは、ECを通じて「商品」を販売してきました。「Tシャツが欲しい人にTシャツを送る」「お茶が欲しい人にお茶を送る」「欲しい人に欲しいものを売る」。これがEC1.0だと仮定します。
次に、インフラが整うことでEC上に商品が溢れ始めました。すると、人々は膨大な商品の中から「なぜ買うのか?」を意識し始めます。「同じ野菜でも、顔が見える農家の野菜を買いたい」「敏感肌のオーナーが苦労して作った化粧水に共感した」。こうした「物語」にお金を払うようになったのです。これが、EC2.0でしょうか。つい最近の話のような気もしますね。
さらに時代は進み、人々は他人の物語よりも、 自分の物語に関心があることに気づきます。要するに、自分も「参加」することに価値を見出したのです。クラウドファンディングもそのひとつと言えます。「自分が参加して体験すること」にお金を払うようになり始めたのです。これをここではEC3.0と名付けましょう。
しかし、私はこの動きをシンプルな進化ではなく、オフライン時代の購買体験に回帰し始めているのではないかと感じています。