テクノロジーの進化により、オンライン上の閲覧や購買といったユーザー行動データ、POS等のオフラインデータ、コンテンツデータの統合・管理が飛躍的に可能になった。そんな中、再度注目を浴びているのが、リアルタイムレコメンドだ。今回は実際の活用事例を通じて、進化した最新のレコメンドの動向を伝えていく。
良いレコメンドの3条件
高田氏は講演の前半で、良いレコメンドの条件として、
- リアルタイムに行動を分析する
- ユーザーごとのこれまでの行動を反映する
- シーンに合わせてカスタマイズする
の3点を挙げた。この3点をいずれも備えていることが必要である、と高田氏は強調する。
1:リアルタイムに行動を分析する
「まずは、リアルタイム性についてご紹介します。ここで言うリアルタイム性とは、リクエストごとにその瞬間に最新情報に基づいたレコメンドを提示することを指します。バッチで学習させたレコメンドではなく、その場その場で最新情報をもとに計算して行います。これにより、その瞬間の関心をとらえ、新商品やタイムセール中の商品に対して新たなモデルを組み直すことができます。ユーザーの嗜好は、メディアへの露出や店舗によって変わっていくものだからです。
リアルタイムでなくては、当日発売された商品のレコメンドが出せず、発売直後のタイミングを逃してしまうことや、急な気温の変化に対応できません。また、男性ユーザーが異性にプレゼントを探している場合、普段と違う女性向け商品をレコメンドするような臨機応変さも求められるのです」(高田氏)
2:ユーザーごとのこれまでの行動を反映する
「続いては、行動分析、または動線分析についてご紹介します。これは、ユーザーの過去の行動を把握することを指し、これをレコメンドに反映することでCVRを向上させることができます。ここでは仮に、ユーザーが見ている商品が『ボーダーのワンピース』だとしましょう。
同じ商品を見ていても、あるユーザーに関してはワンピースという軸で探している中でボーダーのワンピースに行き着いています。それに対して別のユーザーは、ボーダーの柄を軸で探している中でワンピースを探しています。これらはそれぞれ次に薦めるべき商品が変わってくるため、『現在見ているもの』だけではなく『ユーザー全体の行動』の反映としてレコメンドすることが必要になります」
ユーザーの情報が少ない段階から、商品を見るごとに情報が集まり、次第にパーソナライズされていく。レコメンドの効果を最大化するには、こうした行動すべての分析が必要となる。
3:シーンに合わせてカスタマイズする
「3点目は、シーンに合わせたレコメンドのカスタマイズについてご紹介します。行動をベースにしたパーソナライズレコメンドとは、『これを見ている人はこれも見ています』とか『これを見た人が買っているのはこういったものです』などです。また、閲覧履歴やカートの履歴、購入履歴など事実そのものも、ユーザー行動に含まれます。
それらを『どのカテゴリーから出すか』や『どの価格帯から出すか』というフィルターと組み合わせることで、提示できるレコメンドの種類を増やすことができます。これが、シーンに合わせたカスタマイズです。これらのレコメンドアルゴリズムを、場面に応じて使い分けることが重要となります」
以上、レコメンドの3条件を説明したのち、後半では、レコメンドを使った実際の効果について、各マーケティング施策と組み合わせた事例を挙げて紹介した。
メールマガジン✕レコメンドの組み合わせ
まず高田氏が紹介したのは、メールマガジンのレコメンドの実装事例だ。メールマガジンの中にレコメンドエリアを設け、ユーザーごとに最適化されたコンテンツを出して効果を上げる。この施策により、ある企業ではクリック率でそれまでと比較し15%アップ、レコメンドをクリックしたユーザーではコンバージョン率がこれまでと比較し79%アップとなったという。
「特徴として、メールの開封時点でリアルタイムにレコメンドをサーバーに問い合わせるという点があります。最新の情報に合わせてレコメンドを取得できるため、メールの開封のされ方に応じて最適化できます。つまり、メール配信直後だけではなく、メールを開くまでにサイト上で違う行動をしたユーザーに対してもその行動をすべて反映、メールを開いた時点での情報に合わせていきます。開封時点での最新のレコメンドを取得し、最新在庫に基づいた形でレコメンドを出すことで、在庫切れ等も起こりにくくなります」
検索✕レコメンドの組み合わせ
次は、検索とレコメンドを組み合わせている事例について紹介がなされた。これは「検索リッチサジェスト」と呼ばれるもので、例えば「か」と1文字入れただけで“カットソー”や“カーディガン”を候補として提示する。ユーザーは検索がしやすくなるうえ、さらに別のお薦め商品も併せて提示できる。
「検索リッチサジェストにより、コンバージョン率が導入以前と比較し6~7倍に上がったという明確な成果が出た企業もあります。サジェストにより詳細ページまでのページ遷移を最小化し、検索候補だけでなくユーザーの行動に合わせたお薦め商品まで出すことで、トップページ上だけで商品の比較検討までが済んでしまうのが強みとなります」
接客ポップアップ✕レコメンドの組み合わせ
次は接客ポップアップとレコメンドの例だ。これはWeb接客という呼ばれ方もすることもあり、販売ページの下にポップアップで商品を出し、クリックすると商品が表示される形のレコメンドだ。
「ユーザーの行動に合わせ、メッセージを出すタイミングをツールでパーソナライズし、その中でレコメンドを表示する。こうしたポップアップにより離脱を抑制し、コンバージョン率を向上させることが狙いです」
高田氏が挙げた二つの事例では、接客ポップアップとレコメンドを組み合わせることで、それぞれ施策前と比較しコンバージョン率が48%アップ、92%アップという結果となったという。コンバージョン率を高めるために、接客ポップアップと連動させることで飛躍的な効果が期待できるとした。
マーケティングオートメーション✕レコメンドの組み合わせ
「次はマーケティングオートメーション(以下、MA)と組み合わせた例をご紹介します。こちらはシナリオを複数用意し、それを実行するというMAのセオリーに従った施策です。一度だけ購入履歴があるユーザーに対して複数回購入を促すためのアクションを自動化して行ったり、既存ユーザーに特定のブランドの新着商品情報を送ったり、全会員へのメールマガジンの定期配信を行います。
これらの取り組みは、いずれもCCMP上で実行され、MAと組み合わせることでセグメントを管理し、メールを自動配信します。効果の良い施策が見つかれば、それを全ユーザーに拡大して繰り返し実行できます」
さらに高田氏は、MAとの施策においては、こうした施策がすべてシステムにより実行されるため、追加の人手がかからないことも大きなメリットだと強調した。
リターゲティング広告✕レコメンドの組み合わせ
リターゲティング広告に関しては、商品レベルでの閲覧ユーザーをターゲティングし、商品を買ってくれるユーザーに対してのみ配信するものや、新商品の発売などに合わせて実施時期をピンポイントで配信するものなどがあると紹介した。
「複数のDSPを使うことで、それぞれが保持する在庫に広くアプローチできます。全自動のレコメンドリターゲティング広告ではなく、DSPに入稿する形でのレコメンド広告として、大きくカスタマイズされて運用されている点が特徴です。細かいターゲティング、商品の露出が可能になるため、今後の発展が望まれます」
コールセンター✕レコメンドの組み合わせ
レコメンド事例の最後には、コールセンターとレコメンドの組み合わせ、注文時にユーザーから電話を受け、コールセンターのスタッフが注文時に商品を薦める、といった事例が紹介された。
「注文された商品が在庫切れだった場合は、別のよく比較検討される商品を提案する。これらをオペレーターの端末にレコメンド表示することで可能にするのが、コールセンターレコメンドです。
ある企業では、オペレーターが薦めた商品のうち20%が購入されていることがわかったそうです。ポイントとなるのは、オンラインでユーザーが行動したデータを使い、学習データをオフラインでの活動にも活用している点です。この事例で面白いのが、オペレーターさんやチーム間での競争意識も高まり、よりレコメンドの活用が促されるといった効果があることです」
レコメンドの効率を高める、アイジェント・レコメンダー
最後に高田氏は、シルバーエッグ・テクノロジーが提供しているレコメンドサービスについて紹介し、講演を締めくくった。
「弊社では、リアルタイム・レコメンドサービス『アイジェント・レコメンダー』を提供しています。本サービスは、上記で紹介した『良いレコメンドの条件』をすべて満たしたツールです。弊社では、ツールの提供だけでなく、成果報酬でのコンサルティングサービスも行っています。
今回は、さまざまな種類のレコメンドについてご紹介いたしました。単にレコメンドというと、『この商品を購入された方は、こんな商品も買っていますよ』というものといったイメージを持たれると思いますが、今回お話をいたしましたように、それぞれのシーンによってレコメンドの取り組みは変わります。ぜひ、各シーンに合わせたレコメンドで効果のアップを図っていただけたらと思います」