小田急はなぜ、インナーウェアのEコマース「白鳩」に出資したのか
11月に白鳩に5億円を出資し、20%強の株式を取得した小田急の売上高は約5,300億円である。私鉄では、東京急行電鉄(9005)、近鉄グループホールディングス(HD/9041)、阪急阪神HD(9042)、名古屋鉄道(9048)、東武鉄道(9001)に次ぐ6位だが、わが国最大のターミナル・商業都市の新宿を拠点としているだけに、流通事業の比重が高い鉄道会社だ。
小田急百貨店新宿店やスーパーの「Odakyu OX」を中心とする流通事業の売上規模は、2,200億円を突破。およそ1,600億円にとどまる運輸事業を上回る。その小田急は小売事業のさらなる拡大を目指すとともに、「Eコマース事業の強化が課題」としているだけに、今回の白鳩への出資となったのだろう。
白鳩は、ネット上の各種チャンネルを通じて商品を販売するEコマース、いわゆるネット通販企業である。上場は2014年4月。主な販売品はインナーウェアで、16年8月期の売上高は45億9,593万円だった。過去5年間、最終赤字は1度のみ。営業赤字はない。
出店先は、自社サイトや「楽天市場」「Yahoo!ショッピング」「Amazon.co.jp」「DeNAショッピング」「天猫国際(中国)」など、ネット上のショッピングモールである。 ただし、ビジネスの根幹は、実店舗による販売に近いといっていいだろう。商品の仕入れや物流などは自社展開が基本だ。受発注・在庫・顧客・売掛・入金・棚卸などをワンストップで管理する基幹システムの「楽らく通販システム」も自社開発である。
アウトソーシングに依存することが多いネット企業とは、一線を画しているのが同社の特徴だ。
「売上高÷仕入高」が平均1.63~1.65で推移
白鳩は、1日の出荷個数が7,251個(年間225万個相当)まで可能な配送センターや倉庫をすでに自前で備えているが、事業の拡大に備え新たな物流センター建設用地をすでに、9億円弱で取得しているほどだ。
表は白鳩が開示している、品目別売上高と仕入高である。仕入値にどのくらいの利益をオンしているか、おおよその目安になるものだが、実店舗はともかく、Eコマース企業でこの内訳を開示している企業は少ない。販売より先に、インナーウェアをインナーメーカーから実際に仕入れ、自社の倉庫で管理していることを意味する。
白鳩の商品別「売上高÷仕入高」の推移
14年8月期 | 15年8月期 | 16年8月期 | |
---|---|---|---|
ファンデーション | 1.55 | 1.59 | 1.59 |
ランジェリー | 1.61 | 1.60 | 1.42 |
レッグ | 1.77 | 1.72 | 1.33 |
ナイティ | 1.80 | 1.56 | 1.64 |
ショーツ | 1.43 | 1.51 | 1.48 |
メンズ | 1.48 | 1.37 | 1.41 |
全体 | 1.64 | 1.65 | 1.63 |
ランジェリー(キャミソールやスリップなど)、レッグ(パンティストッキングやソックスなど)、ナイティ(パジャマやルームウェアなど)類は、数値の推移にややバラツキがあるものの、全体では「1.63~1.65」とほぼ平行線である。
これは、全体売上高の半分を占めるファンデーション(ブラジャーやガードルなど)の販売価格が、仕入値の「1.55倍」から「1.59倍」で推移していることが要因だ。
ユニクロを手がけているファーストリテイリング(9983)の「売上高÷仕入高」数値は、およそ2倍であることから、それよりは低い倍率といえるだろう。
もちろん、仕入商品がその年度に完売することはなく、残りは在庫となるのが一般的である。その在庫と売上高の関係から商品回転日数が明らかになるが、白鳩の場合は、倉庫に保管している商品が57日から60日ですべて入れ替わっている計算になる。