ビジネスを理解すると、提供するべき価値が見えてくる
逸見(キタムラ) 前回、ドラッグストアはお客様の来店頻度が高いという話があったのですが、そもそも、店舗数が多いと最寄り駅に店舗がある可能性が高くなって、利用頻度が上がるんですよね。だからグループを統合して、ブランディングしていくんだと思います。お客様から見た統一感は、すごい力になってきますね。
郡司(ココカラファイン) そうですね。中期経営戦略の基本方針が4つありまして、そのひとつが、「いつでも、どこでも、どなたでも、ココカラファイン」です。統合後、看板だけを同じにしても意味がないので、アクセスとサービスを良くし、なおかつ、お客様とのタッチポイントを整合性のあるものにし、1人ひとりの興味にあったサービスを提供していきましょうという戦略です。
逸見 お客様の視点で考え、ネットだろうと店舗だろうと便利に使えるようにするというわけですね。お客様の立場から考えれば当たり前ですけれども。
郡司 自分でECを担当してみてわかったのですが、EC事業だけで利益を上げるのはマストではあるけれど、ドラッグストアを運営する企業においては、それだけでは意味がないのです。一方、店舗で提供している情報は量が少なく、そもそも、お客様から相談してくださらないときっかけができない。早い時期から、タブレットのようなものを活用して接客していくべきだと考えていました。
このように、会社のビジネスそのものを理解すると、何をするとお客様にとって価値になるのかが見えてくるはずなんですよ。我々のようなドラッグストアでは、それが明確なので、そんなに悩む必要もない。やることは決まっているから、あとは実行するだけです。
事業構造を整理せずして、統合はできず
逸見 前回も統合の話が出ましたし、実際に郡司さんもID・パスワードやウェブサイトの統合を手がけられましたが、そのためには、事業構造を整理するところから進めないと、ECの話だけしてもだめなんですよね。
オムニチャネルは、全体構造を理解できていて、業務フローのつながりが見えてないと、まったく考えられないんです。そこを飛ばして、システムのことばかり話していては、いつまで経っても実現できません。
郡司 当社の場合、部長級が集まる会議で、「オムニチャネルを念頭に置いたマーケティングはこういうものです。良品計画さんや東急ハンズさんはこういうことを実施して、お客様満足度が上がっています」という話をしたら、社長が「やろう」と言ってくれました。
それが大前提で、EC事業の黒字化に取り組みました。具体的には、注文単価を上げて損益を改善するという取り組みです。ECは、デリバリーコストが非常に重いので、ECの中身を改善しつつ、全社的にオムニチャネル化しないと、うちの強みが作れないと考えています。
逸見 知るとわかるは、話が違うというやつですよね。郡司さんのように、もともと店舗をよく知っていて、業界の構造も知っているうえで、はじめてECに取り組んだ。「なんでこんなコスト構造でこれやっているんだ」「これはだれが決めたんだ」といったことを、普通のビジネスの観点、お客様の視点で整合性をとっていく。これがオムニチャネルであり、そのために必要なEC事業の改善だと思います。