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濱渦さんは「会長」に、カゴラボは次のサービス開発へ 話題のアラタナが見る、ECの未来

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2015/06/03 08:00

スタートトゥデイとのM&Aにより、アラタナの組織が大きく変わった。新しい組織は非常にシンプルで、かつ、これからのEC支援のあるべき形をそのまま体現しているように見える。その狙いとアラタナの今後について、会長となった前社長・濱渦さんと、社長になった前副社長・山本さんに、宮崎でお話をうかがった。

アラタナ新体制に見る、新しいEC支援とは 会長&社長に訊く

 2015年3月末、スタートトゥデイとアラタナのM&Aは業界に大きな衝撃をもたらした。自社ECサイト構築・運営で800サイト以上の実績を持ち、「宮崎に1,000人の雇用をつくる」をミッションとしているアラタナが、IPOを目指していることは広く知られていたからである。

 スタートトゥデイからの発表によれば、同社のM&Aの目的は「自社ECサイト支援事業を拡大するため」らしいが、アラタナ側がグループ会社の1つとなり、目指すものはどこにあるのだろう。さまざまな憶測が飛び交うなか、アラタナは、役員人事を刷新し、組織を変え、すでに新しい未来に向かって走り出していた。

 今回の人事で、起業社長から代表権を持たない取締役会長となった濵渦伸次さんと、元副社長から代表取締役社長となった山本稔さん、お2人にお話をうかがった。

左・代表取締役社長 山本稔さん、右・取締役会長 濵渦伸次さん

――お2人とも新しい役職に就かれたわけですが、会長と社長の役割分担はどのように?

濱渦 まず、今回のM&Aで、アラタナは4社めのグループ会社となるのですが、スタートトゥデイを含めて考えても、アラタナが最も、エンジニアのリソースを持っている会社です。そのリソースを活用し、僕がアラタナとスタートトゥデイ、2社の調整役となって、共同プロジェクトを進めていくということはあるでしょう。

 一方で、スタートトゥデイさんが千葉で地元に根ざした雇用を生み出されているように、僕らも「宮崎に1,000人の雇用を作る」をミッションにしています。そのミッションをさらに進めていくためにも、きちんと代表権を持った社長が宮崎にいるべきだと考え、山本が代表取締役社長に就任しました。

――新体制は、「テクノロジー」部門と「マーケティング」部門の2つに大きく分かれ、それぞれの事業部長が取締役になっていますね。

濱渦 テクノロジー部門では、これまでオープンソースのEC-CUBEを使った「カゴラボ」というフレームワークを用いてECサイト構築をしていたのですが、それを一度リセットして、Scalaという言語とDDDという設計手法(※)を用いて、ゼロから自分たちで作っていきます。これまでのアラタナの主要サービスを一度止めて、中長期的にいいものを作り上げる。そのほうが最終的には売上や利益を拡大できだろうという挑戦は、IPOを目指していたら難しかったかもしれません。

 マーケティング部門については、ECではこれからますます「どう売っていくか」が重要になってくるので、もう1つの柱としてやっていく。マーケティング支援はいろいろありますが、ECに特化したところはそれほど多くないと思います。

山本 アラタナのマーケティングは、「SEOとPPC広告のハイブリッド型SEM」と考えていただいていいかと思います。現在のマーケティングサービスの売り上げのうち、半分が広告、半分がSEOという割合になっていますし。すでに収益が出ているECサイトなら、コンテンツマーケティングをしっかりやることで、広告の成果も出やすくなっていくでしょう。

 ただし、コンテンツマーケティングというと、ブログコンテンツのことだと勘違いされている方も多いのですが、ECの場合は少し違います。これから僕らが、ECのマーケティングのスタンダードをしっかりと提供していきます。

※Scalaという言語とDDDという設計手法
詳細はアラタナエンジニアブログ「僕らのScala + ドメイン駆動設計(DDD)はじまった宣言。フロントエンドも13の技術を選定し、設計から見直します。」を参照。

――お話を聞いて、これからアラタナさんが支援していくのは、大企業に限られてしまうようなイメージを持ったのですが。

山本 いいえ、テクノロジー部門が担当するのは、個々のECサイトをフルスクラッチで構築するわけではなく、ゼロから自分たちのECパッケージを新たに作るということです。大企業でなくとも、クラウドで自分たちが必要なサービスだけ組み合わせられる、セールスフォースさんのサービスのようなイメージかな。

濱渦 カゴラボがもともとコンセプトにしていたものは変わらず、柔軟にカスタマイズできるものを目指します。新しいパッケージの大きな特徴は3つあって、先に述べた「テクノロジー」「マーケティング」に加えて、もう1つは「物流」です。アパレルだけで1,000億円の在庫を持つ「ZOZOBASE」はやっぱりすごい。スタートトゥデイはそれを、自分たちでゼロから作り上げたんです。そこに僕らのこれまでのノウハウが加わると、誰も真似できないものになっていくんじゃないかな。

――とても大きく、かつ、正しすぎる進化だと感じました。オムニチャネルなどECを取り巻く環境の変化が、アラタナさんに大きな変革を迫ったということはありますか?

濱渦 うーん、ECサイトをただ作るだけでは価値がなくなった、そのマーケットはもう大きくは伸びないだろうというのは感じていました。そんな中、アラタナが大きく変化するには、IPOなのかM&Aなのかと考えていくと、先ほど申し上げた巨大な物流網があり、600以上のアパレルブランドとの実績を持つスタートトゥデイの資産も活かして、単にECサイトを作るところを磨くより、トータルパッケージのサービスにしていく、という決断をしたということです。

山本 環境の変化があったとしたら、ブラケットさんやBASEさんのサービスが、これまでのECベンダーさんから見ればかなりダイナミックなことをされていて、ECサイトを作るという視点では、新規で参入する価値がなくなっていっていると思います。

 また、これから3年で、ECの勝ち組というのがさらに明確になっていくんじゃないかな。うまくいっていないところは、成功している企業以上の投資をしていく覚悟がないと、3年後に勝ち組になるのは難しいと思います。そこで僕らが選んだのは、今うまくいっている企業同士が組んで、さらに勝ち組を強くしていくという考えかたです。ハッピートライアングルを実現させたい。これには賛否両論あると思いますが、インターネットのビジネスはそこがポイントですよね。

 とくにマーケティング部門では、SEOとPPC広告のハイブリッド型のSEMということで、かなり手数を入れて取り組むサービスになります。それを成功させようと思ったら、まずは、今うまくいっている企業さんと始めて、勝ち組をさらに強くするという選択になるわけです。

――会長・濱渦さんの役割は、アラタナさんとスタートトゥデイさんが一緒に取り組むプロジェクトの調整役というか、リーダーというか。今後のポジションや活動が気になります。

濱渦 詳しいことは申し上げられませんが、僕が活躍できる部分がすでにいくつか出てきていて、そこのプロジェクトにいくつか関わらせてもらっています。「カゴラボ」に続く新しい製品を作っていくというのは、アラタナとして僕もやっていきますし、スタートトゥデイとアラタナが絡む部分があれば、僕が調整してやっていくという感じです。

――自社EC支援、新しいパッケージ含め、とにかくエンジニアが必要になりそうです。

濱渦 先に述べたとおり、グループ内でのエンジニアのリソースは僕らが一番持っていて、一緒に取り組むプロジェクトでそれが生きてくれば、今回のM&Aをやってよかったということになる。日本国内のM&Aは成功事例が少ないけれど、世界を見るとYouTubeやInstagramなどたくさんありますよね。

 M&Aに関しては、ただイグジットしただけではなくて、成功事例を作るという気持ちでやっているんです。おそらくですけど、スタートトゥデイの前澤社長も、「アラタナは宮崎に1,000人雇用を作るんだ!」という、勢いを評価してくれたところもあるんじゃないかな。それが幻想にならないように、したいと思います。

 これまで8年かけて100人の会社にしてきたのですが、次は3年で2倍、200人にするという目標を掲げています。大丈夫かな(笑)。こちらも、IPOでは立てられなかった目標かもしれませんね。

山本 アラタナの新体制がシンプルだと言いましたが、スタートトゥデイさんもシンプルで、本当にすごい会社です。学ばせていただくことはたくさんある。一方でやはり、ファッション系に特化していらっしゃると思いますので、それ以外の分野のノウハウは、僕らが会得していきたいと思います。

――ありがとうございました。

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