はじめに:EC売上の「最後の壁」は決済
ECの現場では、集客、UI改善、コンテンツ最適化といった購入前段の取り組みに多くのリソースが投じられる。広告運用を改善し、ECサイトのUIを整え、商品説明をわかりやすくし、顧客導線を最短化する。その努力は確実な成果へとつながるが、購入フローの最終地点である「決済」で一度でも躓けば、それまでの時間と投資が一気に無駄になる恐れがある。
決済は技術的な裏方処理ではなく、顧客が「買う」と決断する最後の瞬間で、最も重要な接点である。しかし、多くの現場ではこの領域が他の施策ほど重視されていない。本稿では、EC事業者が直面する決済段階での離脱について、EC担当者が押さえておきたいポイントと、実務で活かせる最適化の方向性を解説する。
決済のセキュリティ強化が生んだ、新たな課題とは
近年、ECの決済においてたびたび話題に上がるのが不正利用である。不正利用は増加の一途をたどり、特にEC取引がターゲットになっている。一般社団法人日本クレジット協会によると、2025年のクレジットカード不正利用被害額は510億5000万円。うち93.1%(475億4000万円)がインターネット取引におけるカード番号の盗用によるものだった(※1)。
この流れを受け、業界全体でクレジットカードの本人認証を強化する動きが進み、2025年3月末までにすべてのEC事業者に「EMV 3-Dセキュア(3Dセキュア2.0)」の導入が必須化された。これは、オンライン決済の際、カード番号や有効期限の入力に加え、取引ごとに本人認証を行う仕組みであり、不正なクレジットカード利用やなりすましを防ぐ役割を果たす。具体的には、ワンタイムパスワードや生体認証などを通じて、カード所有者本人であることを確認する。
3Dセキュア2.0は不当な取引を防ぎ、安全性の向上に寄与する一方で、購入者にとっては追加の認証ステップが手間となり、購入離脱(カゴ落ち)につながる恐れがある。
つまり、セキュリティ強化によって「カゴ落ち」の増加という新たな課題が生まれており、多くのEC事業者は気づかぬまま売上の損失を招いている。セキュリティ強化が避けられない中、EC事業者には「安全性」と「利便性」を両立するための実践的な対策が求められている。
※1 参照:一般社団法人日本クレジット協会「クレジットカード不正利用被害の集計結果について」
