データ活用は3層構造化と低コスト施策がカギ
ECの高度化には、データ活用が欠かせない。パネルディスカッションの中では、TSIのデータ活用の取り組みについても明らかになった。
TSIは、蓄積されたデータを「データレイク」「DWH」「CDP」という3層構造で整理し、データ管理コストを削減したという。これにより、ブランドを横断したデータ分析も可能になった。
TSIはまずこの環境を活かしながら、メールやポップアップなど「コストが低いチャネル」からデータ活用施策を始め、成果が見込める広告やLINEなどの高コストチャネルへと転用していくことを目指している。TSIは、Treasure DataやKARTEといった外部サービスとも連携し、新規顧客へのアプローチや、リアルタイムのポップアップ表示など、チャネル最適化を図っているという。
一方、TSIはデータ活用の課題として、「人材育成」と「経営層への説明」を挙げた。「施策ベースでデータを触る人材はいるが、経営の中心には入り込めていない」という現状を吐露し、投資額が大きいゆえに経営層への説明が難しいという課題も指摘した。
これに対し、TISの渡辺氏はデータ活用の未来として「過去の分析から未来の予測」へシフトする必要性を説く。従来のBI(ビジネスインテリジェンス)では「過去に何が起きたか」を分析することしかできなかったが、AIを活用することで、需要予測やマーケティング効果予測などを行い、その予測に基づいて施策を自動化する「予測型マーケティング」の実現が、マーケティング成熟度の高い企業には求められると語った。
AIによって「100万人に100万通りのアプローチ」の現実度が高まり、本格的な1to1マーケティングの時代が到来するという。
TSIとTIS、それぞれが描くECの未来
ECサイト統合という大きな変革を成し遂げたTSIは、今後、海外戦略とサプライチェーンの見直しを重要課題として挙げた。「シンプルに越境ECをやっただけでは売れない」とし、インバウンドや現地でのOMOをセットで進めていく考えを示した。
また、店舗やECで売れていない在庫が倉庫に山積みになっているというアパレル特有の在庫問題の解消にも、サプライチェーン全体の見直しで取り組んでいくという。TSIは「常にECに置いている状態にしたい」と語り、在庫管理の抜本的な改革を進める姿勢を見せた。
さらに、今後の人材についても言及。AIによるマーケティング業務の効率化が進むにつれて、「人の販売力」がより重要になってくると岸氏は予測。AIでは代替できない、顧客とのコミュニケーションやブランドの世界観を伝える力が求められる時代になるだろうと語った。今回のECリニューアルで目標の収益改善を達成したTSIは、さらに最適化と効率化を推進し、組織や人材の役割を柔軟に変えていく必要があると語り、セッションを締めくくった。
最後に、TISはこれまでの「要件定義起点の請負開発モデル」から脱却し、「未来志向の価値創造」を行う企業への変革を表明した。その一環として、コマースの未来をストーリー仕立てで描いた「MARKETING CANVAS」をリニューアル。
ShopifyなどのECソリューション、Databricksのようなデータ基盤、EC基幹システムまでをトータルで提供し、コンサルティングから施策支援まで伴走する姿勢をアピールした。事業者とのPoC(概念実証)を積極的に推進し、未来のコマースを共に創り上げていきたいというメッセージを伝えた。

本件に関するお問い合わせ
TISは「MARKETING CANVAS」を通じて、EC基盤からデータ活用まで幅広く支援し、共に未来のコマースを創り上げています。詳しくは公式サイトをご覧ください。
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