まずは日本国内で、Amazonをフル活用して売上を伸ばす
村山らむね cheeroさんは、日本での販売でもAmazonをメインの販売場に設定されていますよね。まずは、国内の販売で成功した理由を、流れを振り返りながら教えていただけますか?
東(cheero) モバイルバッテリーを作ったのは、スマホのGPSをよく利用することから電池切れが頻繁にあり、手頃な価格のものがあったらいいなと思ったのがきっかけです。もともと父が機械部品の商社を営んでいたため、自社で製品を作るハードルは低かった。リーマンショック以降、機械部品事業が落ち込んでいたこともあり、これまでの資産を活かしながら転換しなければ、という考えもありました。
村山らむね ご実家が機械部品の商社でいらしたのは、東さんにとってはラッキーだと言えますね。製品を作られて、販売ははじめからネット通販に絞られたのでしょうか。
東(cheero) 会社としてコンシューマー向けビジネスははじめてでした。量販店に置いてもらえないか交渉に行ったところ、数が少なくて相手にしてもらえなかったので、ネット販売でしか始められなかったというのが正直なところです。一方で、ECをベースに大きく成長している企業さんもありましたし、お店の場所が限定されず、日本全国どこにでも届けられるのはネット販売の魅力です。また、商品の特徴から、ネットでシェアしてもらうことで認知が広まるんじゃないかという考えもありました。
村山らむね Amazonで売れているというイメージが強いですが、ほかにも自社ECや、楽天市場、Yahoo!ショッピングでも展開されていますよね。
東(cheero) まずは自社ECから始めたのですが、全く売れなくて。知り合いに相談したところ、「Amazonなら売れるよ」というアドバイスをもらいました。そもそもAmazonは家電が強いですし、商品とユーザーの相性が良さそうだと感じました。商品を作ったのが2011年4月、翌5月にはAmazonに出品し、そこから少しずつ売れるようになっていきました。
村山らむね Amazonへの出品はかなり早いタイミングですね。ブレイクしたポイントはどのあたりでしょうか。
東(cheero) 2012年2月くらいでしょうか。多くの大容量バッテリが、iPhoneを1日1~2回程度しか充電できなかったところに、iPadなどタブレットも出てきて、容量が足りない状況になっていました。そこにいち早く、1万ミリアンペア、iPhoneなら5回ほど充電できる製品を出したんです。その際、Amazonさんに集中することで、シンプルで安価に販売することができました。するとユーザーの皆さんが反応してくださって、自然に広まっていった形です。
村山らむね 2014年末には、13,400ミリアンペアという大容量でコンパクトな新商品を出されましたね。このキャンペーンも、Amazonさんに絞って大々的に実施された印象を受けました。
東(cheero) そうですね。cheeroらしさを突き詰めていくと「1円でも安く、いいものを届ける」がお客様に提供できる価値だ、それを実現するには、Amazonに絞ったほうがいいという結論に至ったからです。
なぜAmazonかというと、「1円でも安く」については、販路を絞れば絞るほど、まず物流コストが安くなります。AmazonのFBAはパワフルですし、決済手段はあらゆるものが揃っていて、お客様の好みにあわせて選んでいただけるのもいいですね。もう1つは、「いいものを作り、広く知っていただく」ですが、Amazonアソシエイトサービスに代表されるように、すでに浸透しているサービスがある。企画から販売まで、少ない人数でも一気通貫でできるのが魅力です。
当社は6月末決算ですが、2014年度の売上高はグローバルで25億円程度になりました。従来からの機械部品事業の売上も一部入っていますが、グローバルで社員は約10名くらい、Amazonの売上が増えても担当者は1名のままで回せるような体制になっていて、きちんと利益を残すことができています。
村山らむね 素晴らしいですね。Amazonさんからご覧になって、cheeroさんが成功されたポイントはどこにあるとお考えですか?
星(Amazon) cheeroさんの特徴は、「動きが早いこと」「オリジナリティがあること」だと思います。モバイルバッテリーをネットで販売するというビジネスは、誰にでもチャンスがあります。
しかしcheeroさんは、商品開発に深く入り込まれたり、Amazonでも人気の「ダンボー」デザインの製品を作られたりといった独自性を、スピード感を持って進められています。価格についても、中間マージンを除くためにもAmazonで販売していらっしゃるのでしょう。これらすべて、お客様の視点に立って行われているのが、成功の秘訣ではないでしょうか。
村山らむね なるほど、独自性とスピード感によって日本で成功をおさめられ、次は越境ECに挑戦されることになったわけですね。
東(cheero) 日本市場もまだまだ伸びてはいるんですが、モバイルバッテリーに関しては飽和してきたと感じています。一方で、東南アジア等はモバイルの利用そのものが伸びていて、規模を拡大するなら外せない市場です。また、国内の販売だけに頼っていると、円安などの為替リスクにも左右されますから、事業を大きくするために、越境ECをやりたいと思うようになりました。