総務省は、デジタル広告市場の健全化を目的に「デジタル広告の適正かつ効果的な配信に向けた広告主等向けガイダンス」を公表した。広告主のブランド毀損や意図しない広告費流出を防ぐために、広告配信時のリスク管理や内部体制整備の必要性を強調している。なお、今回のガイダンスは、2025年4月から5月にかけて行われた意見募集(計141件)や、有識者会議の議論を踏まえて策定されたもの。
デジタル広告の課題
- デジタル広告市場では、著名人等のなりすまし型「偽広告」を端緒とした投資詐欺等が多発。これを背景に、総務省は大規模プラットフォーム事業者に対して対応要請を行った。また、事業者ヒアリングを実施し「ヒアリング総括」として公表している
- 不透明な広告配信により、偽・誤情報等を掲載する媒体などへ意図せず広告が表示される事例が発生している。ブランド毀損や広告費流出、偽・誤情報等の拡散を助長するといったリスクが考えられる

「デジタル広告の適正かつ効果的な配信に向けた広告主等向けガイダンス」の概要
本ガイダンスでは、次のようなことが示された。
広告主等が考慮すべきリスク・課題
- ブランドセーフティに関するリスク:意図しない媒体への広告配信による広告主のイメージ悪化
- アドフラウド(広告費の詐取)のリスク:広告費の流出
- デジタル社会の中の不健全なエコシステムに加担するリスク:偽・誤情報や違法アップロードコンテンツの拡散に金銭的動機付けを与え、更なる拡散を助長するおそれ
経営層が対策に関与することの必要性
- (ミクロ視点)広告主自身のリスク対策の必要性:広告費の不正な流出の防止、ブランドの毀損の防止
- (マクロ視点)広告主の社会的責任の重要性:コンプライアンスリスクの防止、広告主の社会的責任(CSR)
- 経営層・管理層の関与の必要性:(1)現場担当者のみでリスクを防止することの限界/(2)全社的な広告管理・内部統制の必要性/(3)対策のための経営リソース確保の必要性
広告主等が実施することが望ましい取り組みの例
体制構築・目標設定
- 全社的な広告管理体制を構築:経営層にデジタル広告の担務者を配置、広告配信に関する方針を作成し共有、組織内の教育やトレーニング、リスク・対策を取締役会構成員で共有する等
- 広告配信の目的および指標の設定:広告配信目的の明確化(販売促進、ブランド価値の向上等)、目的に応じた効果測定指標の選択、成果指標と品質指標のバランスの考慮
- 年次報告書や自社サイトで情報を開示:年次報告書等への記載、ホームページ上での取り組みの公表等
具体的な取り組み
- 契約段階における取り組み:想定するリスク・対策を調達要件に記載、広告関連団体のセミナー等を通じた具体的な記載内容の作成等
- 品質認証事業者との取引:JICDAQ認証等を取得事業者との取引
- 技術的対策:アドベリフィケーションツール(広告配信状況等を確認するソフトウェア等)の活用、真正性・信頼性保証技術の将来的な活用
- 広告プラットフォームが提供する機能の利用:キーワード等で配信先を限定する機能、広告主が望ましくないと判断した媒体を配信先から除外する機能等
- 掲載先の取捨・選択:セーフリスト/ブロックリストの活用、配信先を把握できる取引手法の採用、予約型広告、PMP等
配信状況確認
- 広告プラットフォームが提供する管理画面やレポート機能により配信状況を確認
- 広告主が意図しない媒体への配信を発見した際のブロックリストへの追加
- 配信状況を踏まえ、対策の継続的な見直しを実施