配送の速さ以外にも差別化要素はある 顧客満足度を上げる施策例
飲食店や小売店、物流会社が対応に追われる一方で、EC事業を展開する企業ではどのような動きがあるのか。具体的なトピックスを見ていこう。
主に法人向けに作業現場で必要な工具や部品、事務用品を販売するMonotaROは、2024年に入り、置き配サービスや出荷後の配送日時の指定設定の実現など、物流面で顧客サービスの充実化を図ってきた。
加えて、同社は2024年9月に顧客が多い東京都や神奈川県など南関東の1都3県で、午後5時までに注文を受けた商品を当日中に出荷する取り組みを開始。12月からはサービス対象地域を全国に拡大している。伊藤氏は「即日配送をはじめ、柔軟性のあるサービス提供で差別化している良い例」だと語る。
「こうしたサービスの需要は、季節や産地にこだわった高付加価値商品のほうが高い傾向にあります。ただし、商品特性や顧客性、ニーズによっては配送の速さを重視しない顧客も少なくありません。たとえば、割引やポイントの付与を行う代わりに、配送の優先順位を落とす施策を取り入れている企業も存在します」
2023年にMMD研究所が行った調査の結果では、即日配送にこだわらない顧客層の存在が示されている。ECサイトで商品を購入した際に自宅受取の配送を選択した経験がある4,211人のうち、87.1%が配送を急がない人向けのオプションがあった場合に「利用したい」もしくは「やや利用したい」と回答した。
また、政府も2024年10月より、物流負荷の選択を消費者に促す目的で新たな事業を開始した。これにアマゾンジャパンや楽天グループ、LINEヤフーらが参画している。具体的には、「置き配」「コンビニ受け取り」「ゆとりのある配送日時指定」を選んだ消費者に対して、ポイントを還元。政府が1回の配送あたり最大5円を補助する仕組みだ。
「Amazon、楽天市場、Yahoo!ショッピング、ZOZOTOWNなどの大手ECモールをはじめ、各社が物流サービスの内容変更や差別化に力を入れています。これにより、複数のチャネルで販売する際の在庫管理や入出庫といった作業が、従来と比べて煩雑になる可能性があります。今後の予測が難しい時代だからこそ、物流による他社との差別化に出遅れないように、継続的な情報収集をしていきましょう」