「2024年問題」本格化から約1年 日常に変化はあったか?
2024年の今頃、「『2024年問題』の影響によって、商品がこれまでのようには運べなくなるかもしれない」との懸念が声高に叫ばれていた。あれから1年。物流環境の変化を肌で感じている読者も多いのではないだろうか。伊藤氏は「特に野菜や果物、鮮魚をはじめ生鮮食品の流通に異変が生じている」と語る。
「長距離輸送を中心に、配送の遅延が各所で発生しています。東京や大阪といった消費がさかんな地域に、商品がとどまってしまう事態が起き始めたのです。そのため、スーパーマーケットなど地方の小売店では、取扱商品の仕入れ先を見直すケースが現れています」
一方、東京でも2024年問題の影響は徐々に広がっている。たとえば2024年8月に公開された「日経MJ」の記事では、老舗果物店・千疋屋総本店の代表取締役社長 大島博氏が「遠隔産地のフルーツが減るといった問題が発生する可能性もある」とコメントしている。
「産地や鮮度にこだわった高級食材を取り扱う飲食店、小売店では『産地直送商品の入荷が遅れている』との声が上がっています。また、運送会社から配送頻度の見直しを相談されることもあるようです」
商品が予定どおり届かない。頻繁に遅延が発生する。これらの問題は、小売店だけでなくEC事業を営む企業にとっても大きな打撃だ。
「2024年まで『即日配送』『送料無料』はさほど珍しいサービスではありませんでした。ECモールを見れば、当たり前のように選択肢として用意されています。それが、商品の配送遅延が発生している現在は、顧客に選ばれるための差別化要因となりつつあるのです」
物流現場の人手不足が深刻化する中、即日配送や送料無料を新たに取り入れるのは時代に逆行しているようにも思える。特に生鮮食品といった既に影響が発生しているカテゴリーにおいて、どう実現するのか。その手段の一つとして、伊藤氏はこの数年で事例が増えた「他社との協業」を挙げた。具体的な例がヤマト運輸の取り組みだ。
同社は、日本航空(JAL)傘下の北海道エアシステムと連携。2024年7月より、航空便によってアワビなど離島の特産品を集荷翌日に首都圏まで運ぶ実証実験を実施していた。その結果、従来はフェリーで奥尻島から東京都内まで3~4日かかっていた輸送が、翌日の午前中に完了したという。
「同社のように、即日配送で既存サービスに付加価値を創出しようとする動きが見られます」