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ヒットよりロングセラーを狙う ネットショップを上昇気流に導くのは“小さな積み重ね”
──前編では、特に運用初期のオンラインショップ担当者が陥りがちな認識の齟齬や、必要なマインドセットについてお話しいただきました。引き続き、問題提起やオンラインショップを発展させるために必要なアクションや考え方についてお聞きできればと思うのですが。
森野 「この施策をやると売れるんですか?」とよく聞かれる問題についてお話したいのですが、いかがですか?
オオスミ それもあるあるですよね。
森野 これに対する回答は、端的にいえば「やってみなければわかりません」なんですよね。やり方にもよりますから。やるにもいきなり完璧に環境を整備して始めるのではなく、お金やリソースを最小限にして、データを取りながらうまくいく方向を探っていけば良いのですが、どうも「0か1か(やるかやらないか)」で判断したがる方が多いんですよね。
オオスミ あとは、「ヒット商品を作りたがる人が多いな」とも思います。「どうやったら売れますか?」は本当によく聞かれるのですが、それがわかれば商品開発やマーケティング担当者は苦労しませんよね。特にスモールビジネスの場合は、ブランドや商品そのものを知ってもらうハードルがあるので、私は「ヒット商品よりロングセラー商品を作りましょう」と伝えています。
森野 確かに、そちらの意識のほうが大事ですね。皆さん「売れたい」と思っていますが、思いがけないところからバズるなど、何らかの理由で売れ始めると「注文が捌けなくて嫌だ」「売れすぎても困る」と悲鳴を上げることも多いです。毎日一定の数きちんと注文が入り、身の丈に合った売れ方をし続ける。これがオンラインショップの理想だと思います。
オオスミ そういった環境を手に入れるには、LTVに着目するのも大事です。LTVという言葉や考え方は、ここ数年でかなり浸透してきたとは思いますが、それでもまだまだ「LTVって何ですか?」「どうやって計算したら良いんですか?」とはよく聞かれます。
森野 もちろん、LTVの概念が馴染まない商材もあるとは思いますが、「お客様の年間の平均購入回数を教えてください」と聞くと、同じお客様に何度も購入してもらう意識があまりない、つまりアプローチが行き届いていないケースも多々見受けられますね。
オオスミ リソースが少ないから、新規獲得ばかり目がいってしまう……といった声も聞きますが、リソースに限りがあるからこそ、メルマガなどを使って既存のお客様にリピート購入を促したほうが効率的です。
森野 「売上を2割伸ばしたい」という目標があったとして、計算してみると「平均年間購入回数が0.5回増えれば達成できますよ」というケースも往々にしてありますから。「楽をする」だと響きが良くないですが、「目標への最短ルートを見つけられるか」と考えればしっくり来るのではないでしょうか。少ない打ち手で成功体験が得られれば、すぐ次の課題解決に着手できるわけですから。
オオスミ LTV向上の話は「もう買ってくれたお客様にもう一度アプローチするのは、押し売りになるのではないか」と懸念している方も多いようです。でも、たとえば化粧品であれば買って良さを体感しているお客様に使い終わりそうなタイミングで「リピートしませんか?」と呼びかけるのは自然ですよね。購入して1週間後に「また買いませんか?」と聞くのは的外れで迷惑な訴求になりますが、「そろそろ買い替えのタイミングだけど、どうしようかな」というところで手を差し伸べれば、他の商品にスイッチされる可能性を排除できます。これがCRM施策ですし、売上はこういった小さなことの積み重ねで増えていくものです。