店舗×EC連動で追加アクション、移住促進まで? 広がるふるさと納税の可能性
ふるさと納税の電子化は、商材拡張や新規寄附者層の拡大のみならず「物流2024年問題との向き合い方や、ふるさと納税業務そのものの効率化、地域経済の活性化など、様々な社会課題を良い方向に導く策として機能する」と続ける森氏。
「特に返礼品は、海鮮物などクール便配送となるものも多く、配送料を原価に含める自治体もいれば、自治体が持ち出しで負担するケースもあったりと、対応がまちまちです。税控除を目的とするふるさと納税は、どうしても年末に駆け込み需要が発生するため、従来の物流の繁忙期と重なり、返礼品を扱う事業者の負担が大きい点も課題といえます。
しかし、旅先納税をラインアップに加えれば、少なくとも物流需要との重なりは考える必要がなくなります。年中観光客が訪れる土地であれば、納税のタイミングの平準化にも作用するでしょう」
森氏いわく、地元の事業者への働きかけが上手な自治体は、ついで買いを促したり、クレジットカードや電子マネーの決済手数料負担を軽減できたりといったメリットを訴求し、旅先納税対応店舗の拡大や利用促進を行っているそうだ。現地で店舗を運営し、ふるさと納税サイトで返礼品を提供している事業者であれば「旅行先で食べたあの商品をまた取り寄せよう」と、さらなる寄附や自社ECサイトでの購入といった追加のアクションにも期待ができる。
「こうして、旅行客が納税者として地域に貢献してくれるようになれば、継続的な寄附や来訪につながりますし、移住などの選択肢に上がる可能性も生まれるかもしれません」
縁をつなげば首都圏・ベッドタウンでもかなう納税額拡大
さらに森氏は、住民票を置いていない自治体が適用範囲となるふるさと納税の仕組みを踏まえ、首都圏やベッドタウンなど、特産品や自然、文化遺産、テーマパークなどといった観光資源を有していない自治体に対するふるさと納税のアプローチ法を次のように提案した。
「『旅先』と見ると、どうしても地方を想像されるかもしれませんが、『おでかけ納税』『留学先納税』などの名称で、身近な縁のある自治体への寄附を上手に促すケースも存在します。
消費が生まれる顧客接点すべてがふるさと納税のきっかけを生むと考えれば、カフェやレストランなど地域に存在するすべての店舗が、自治体にとってこれまで以上に大切な資源となります。消費が循環すれば地域経済も活性化するため、まさに関わる全員がwin-winになる施策だといえるでしょう」
旅先納税のみならず、こうした自治体のデジタルインフラ構築を手助けするために、あらゆる施策形態に応用できるe街プラットフォームを提供するギフティ。既にプレミアム付商品券や観光型MaaSサービスに用いられているほか、旅先納税の仕組みを生かし、インバウンド向けの寄附・体感型ギフト返礼制度「Donate&Go」の推進を、京都府京都市や北海道・ニセコエリアの観光振興を担う一般財団法人倶知安観光協会と進めているという。
ベンチャー企業ならではのフットワークの軽さで、地域課題の解決案を多方面から提案している同社での活動を通して、森氏は何を実現したいのだろうか。最後に聞いたところ、このような答えが返ってきた。
「今回はふるさと納税の話を主にしましたが、あくまでこれは入り口です。e街プラットフォームは、自治体がこれまでアナログで対応していたあらゆるものをDX化できるよう設計しています。これからも自治体がぶつかる課題や『あったらいいな』と寄せられるお声をうまく仕組み化し、地域がやりたいこと・やるべきことをより柔軟に形にできる世界を実現したいです」