「寄附したい」の気持ちをすぐに返せる 縁の数珠つなぎをデジタルで実現
Welcome!STAMPとして提供されてきたサービスは、街のあらゆる課題をデジタル面からサポートする「e街プラットフォーム」として2021年にリニューアル。これにより、自治体は必要なソリューションを選択しながら、地域通貨や金券、クーポン、チケットなどの電子化および運用を実現できるようになった。
「J&Jギフト時代から各地方の課題を聞いてきましたが、日本には風光明媚な景色や特色ある宿泊施設・飲食店など、観光資源を十分に有する市区町村が多く存在します。しかし、『物品として特産品を提供できない』などを理由に、こうした自治体から『ふるさと納税施策がうまくいかない』と相談を受けてきました。
観光資源をふるさと納税の返礼品とする上で課題だったのが、宿泊券や施設の入場券・利用券のような紙媒体を主としていた点にあります。また、ふるさと納税の本質を捉えると、旅行で訪れた際など『応援したい』と思った瞬間に寄附をして、その土地に直ちに還元できるソリューションも必要だと私たちは考えました」
その解の一つが、旅先納税だ。森氏は「旅先で寄附が可能となり、返礼品が電子商品券として即時発行され、地域で広く使えれば、寄附者も土地の人々もみんながうれしい体験を得られる上、地域全体の活性化にもつながる」と強調。2019年に瀬戸内市へ提供し実績を積んでいたことで、Go To トラベル事業における地域共通クーポンの電子化もスムーズにかなえられたという。
「すべての出会いや取り組みが数珠のようにつながり、旅先納税というソリューションになりました。私は今、こうしたご恩を各所に還元したいと思っていますが、この気持ちはふるさと納税の寄附者と自治体の関わり方にも通ずるのではないかと考えています」
84%の未利用者へのアプローチ フックは「デジタル」と「愛着」か
総務省の自治税務局市町村税課が発表している「ふるさと納税に関する現況調査結果(令和6年度実施)(PDF)」によると、2023年度のふるさと納税を利用した住民税控除適用者数は約1,000万人。個人住民税の納税義務者数と割り返した利用率は、約16.3%といわれている(ふるさと納税ガイドより)。
返礼品競争の加速による金額・品目の規制や、物流2024年問題との向き合い方など、ふるさと納税は制度そのものに否定的な意見や疑問が投げかけられることもあるが、森氏は「『返礼品が欲しいから』という動機ではなく、『その土地や人への愛着から寄附を行う』という推し活のような流れを各自治体が作り出せれば、ふるさと納税はより理想形に近づくのではないか」と見解を述べた。
「海の京都エリア(京都府北部7自治体)からは、旅行のために同市に訪れた若年層が、旅先納税で初めてのふるさと納税を体験してくれたといった声が寄せられています。データを見ても、旅先納税では寄附から1日以内の利用者が6割以上を占めているため、現地の魅力を体感した上での行動が促せているといえるでしょう。
また、利用者層に目を向けても、既存の返礼品を送るふるさと納税より若年層の割合が多くなっています。税控除額は所得に比例するため、中心層は必然的に40代から50代になりますが、今後、ふるさと納税の寄附額を拡大したい自治体は、まだ同制度を活用していない約84%、つまり既存の商材では訴求できなかった層にも魅力を感じてもらうためのアプローチが欠かせません」