データの“全体”をみるか“部分”をみるか
データ分析は、新商品の開発や新たなマーケティング施策の検討に欠かせない。とはいえ、比較しているデータがずれていれば、効果的な施策の実行にはつながらないだろう。
『帝国データバンクの経済に強くなる「数字」の読み方』(三笠書房/帝国データバンク情報統括部 著)では、1900年の創業以来、あらゆる企業の過去・現在・未来をデータで明らかにしてきた帝国データバンクが、表面的な数字に惑わされない方法を伝授する。
本書内で注意すべき点として挙げられているのが、割合の単純比較だ。たとえば、店舗Aと店舗Bのうち、店舗Bの方が顧客満足度が高くても、サービスごとに比較すると真逆の結果となるケースがあるという。考えられる要因の一つに、両店舗で各サービスを受けた顧客の割合の違いがある。
「店舗A」は(中略)満足度を得にくい「サービス1」を中心に提供した(注文された)一方、「店舗B」は主に満足度を得やすい「サービス2」を行っていました。そのため、サービス別にみると「店舗A」の方が満足とした割合が高いにもかかわらず、全体でみると「サービス2」の提供人数が多い「店舗B」が勝る結果となったのです。(P.40-41)
本質的な改善点をみつけるためにも、“全体”と“部分”の両方を分析する視点が必要だ。
行政機関の発表からわかるEC需要
近年、エネルギー価格や生活必需品の値上げにより、節約モードに入っている消費者も少なくない。一方、総務省統計局が発表している「家計消費状況調査」の結果によると、2022年のネットショッピングにおける支出金額は、月平均で前年よりも11.1%増の2万810円だ。著者は、「家計の負担は増すばかりですが、ネットショッピングに限れば、消費者の財布のひもは比較的緩くなっている(P248)」と分析する。
行政機関の発表も、EC市場の可能性や消費者の需要を理解するのに役立つ重要な資料の一つといえる。この機会に、目を通してみてはいかがだろうか。
そのほか、「儲かっている企業はどこだ?(P.70)」「物価が上がると失業率が下がる(P.194)」など、本書は様々なテーマでデータの読み方を解説している。興味がある項目から読んでみるのもおすすめだ。