生成AIとパートナーになれるかが企業成長の鍵
昨今、生成AIは人々にとって欠かせない存在となりつつある。企業のマーケティング施策への活用に加え、一般消費者が気軽に利用できるサービスも登場し、一時的な“バズ”の枠を超えたといえよう。そんな時代に求められるスキルを解説しているのが『生成AI時代を勝ち抜く事業・組織のつくり方』(日経BP/梶谷健人 著)だ。
著者である梶谷氏は、生成AIをはじめ先端テクノロジーやプロダクト戦略を軸に、アドバイザーとして10社以上の顧問に従事してきた。同氏は本書内でこう語っている。
このような大きな変化を受け、AIが職を奪うといった悲観的な記事も多い。だが、本書を手に取って下さっている方々のように、この変化にしっかりと向き合い、AIをよきパートナーにできた個人や企業にとっては、むしろ黄金時代が到来する(P.20)
読者の中にも、生成AIの導入による事業成長に期待している人は多いはずだ。しかし、経営層や事業リーダー層の理解が得られなければ、本格的な活用は進まない。そこで梶谷氏は、全社的な意識改革の一環として次の2ステップを提案(P36-37)。その上で、生成AIの具体的な活用方法を紹介している。
- 生成AI領域の社外有識者に依頼して全社向けの勉強会を実施する
- まずは特定の部署の業務に生成AIを活用し、定量的な成果を出す
扱う側の“プロンプト力”が試される
梶谷氏は、生成AIがこれから世界に与えるであろう影響を、本書内で業界別に予測している。たとえば、小売業界の場合「アシスタントAIが次世代のECインターフェイスになる(P107)」可能性があるという。生成AIが各ユーザーとの会話を記憶して、本人以上に趣味嗜好を理解する未来も遠くないだろう。
とはいえ、生成AIを導入する側のスキルが重要ということを忘れてはならない。ユーザー体験を改善するには、生成AIの育成や活用マニュアルの整備が不可欠といえる。梶谷氏は「企業は、プロダクトの一部でも早期から“スタッフ”としてのAIを介したユーザー体験の提供に着手し、知見をためていくべき(P158)」と強調する。
社内業務に生成AIを活用する場合も同様だ。扱う側がどのような指示を出すかで、生成AIのアウトプットの質は大きく変わる。
ChatGPTへの指示へのコツは、ChatGPTは「めちゃくちゃ物知りだが、全然融通が利かない新卒1年目の後輩」として扱うことだ(P178-179)
新しいかつ今後の企業成長を左右するテクノロジーだからこそ、本書を通じて生成AIを扱うためのスキルを学んでみてはいかがだろうか。