ターゲットは既存のヘビーユーザー
2024年1月9日、一休は海外ホテルの予約サイトである「一休.com海外」をリニューアルオープンした。同社は2024年以降、アウトバウンド事業へも注力していく方針を示している。ターゲット層は、一休が提供する既存サービスの会員だ。特に、利用頻度の高い顧客をメインに据える。
「『一休.com』は、ヘビーユーザーに支えられています。一休.com海外をリニューアルした大きな理由は、そうしたお客様に喜んでもらえるサービスを作りたかったからです」
一休.comユーザーの中には、年間で数百万円もの金額を利用する顧客が少なくない。海外ホテルの予約単価も、他社サイトと比較して2倍以上高いという。2024年1月には、ドバイやモルディブなどリゾート地のホテル予約が目立った。一休.com海外のサイトリニューアルから間もないが、既に1回の予約で100~200万円をかける顧客が現れている。
小原澤氏は「一休.com海外を利用するお客様は、昨今の円安による影響をあまり意識していない」と分析した。
生まれ変わった一休.com海外が目指すのは、「国内と同じように海外のホテルが予約できるサイト」だ。リニューアル前の一休.com海外には、利便性に課題があった。掲載エリアや施設数は少なく、ホテルの選択肢は限定的。掲載している写真や情報量にもばらつきがあった。決済は現地でしかできず、一休のサービスの強みであるポイントの即時利用も適用されていなかった。
今回のサイトリニューアルには、一休で長年経験を重ねたデザイナーが参加。小原澤氏は、「国内向けサービスで培われたノウハウを生かしたサイトが構築された」と胸を張る。
「新たな一休.com海外では、すべてのUIをゼロから作り直すことにしました。サイトの見た目は一休.comにあえて似せています。リニューアル後には、SNSで『国内版と変わらない使いやすさ!』と反応してくださるお客様も見かけました」
ターゲットを既存顧客に絞るのは、データ活用の点でもメリットがある。国内の宿泊履歴から好みに合った海外のホテルをレコメンドする施策が可能だ。複数のサービスを横断して利用する顧客に対し、一貫した体験を提供できる。
「たとえば、古い建物をリノベーションした国内のホテルへ宿泊履歴があるお客様には、海外でも歴史的な背景のあるホテルを提案するなど、パーソナライズされたレコメンドを提供していきたいです。もちろん、一休.com海外のみで十分なデータが蓄積されれば、お正月に毎年ハワイへ旅行するお客様へ、前回の予約と同時期にハワイのホテルをレコメンドするなど、国内と同様のサービスが提供できると考えています」