前回の記事はこちら
店舗は好調、EC売上はいまいち 本当にそうですか?
D2Cブーム、メーカーの直販チャネル開拓、コロナ禍による各社のEC投資強化と、いわば「バブル」とも言える状況だったこの数年。それと比較すると、2023年は「誰でも勝てる時代が終焉し、勝ち負けが見えてきた年だった」と河野氏は振り返る。
「2023年は『店舗が好調だ』というブランドが増え、リアル需要が完全に戻ったことがうかがえます。特に、コロナ禍の苦しい中でもOMOを含むチャネル連携の強化や、デジタルを使った顧客体験のアップデートなどといった挑戦を続けてきたブランドは、その投資対効果を感じられたのではないかと思います。
しかし、店舗に顧客が戻れば、相対的にEC売上や構成比率が下がるのはやむを得ません。さらに、競合の増加によりECサイトの売上が伸び悩む要因は、以前よりも増えています。売れないからリソースを投下してもらえず、人手が足りない。コロナ禍以前のように肩身が狭くなり、改善施策のための提案が通りづらいといった負のループを目の当たりにすると、なんとも複雑な気持ちになります」
特に都心部の店舗では、インバウンドの戻りなどもあり、前年比で良い数字が出やすい。「店舗は好調だが、ECサイトの売上はいまいち」という印象を抱いている人は、伸び率だけで見ていないだろうか。
「実際にコロナ禍やそれ以前よりも店舗の売上が伸びているならば問題ないですが、物価高など日本の消費者にとって財布のひもが堅くなるような社会的背景にも目を向けなければなりません。一見すると『客単価もアップしているし好調』と思っても、それは単に原材料費が高騰し、商品単価を上げたことによるものではないでしょうか。ブランド全体が本当に調子の良い状況なのかは、冷静に判断して戦略を練る必要があると思います」