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広告ビジネス設計の見直しを迫られるGoogle
2023年のGoogleの動向を振り返るならば、キーワードとなるのは「動画のマネタイズの再設計」と言えるだろう。2010年代後半から始まったTikTokの流行を皮切りに、縦型ショート動画が世の中に浸透し、YouTubeもShortsをリリース。短尺で気軽にアップロードできることから、人々の暮らしに動画をより身近なものとしたが、広告が収益の柱となるGoogleにとっては「新たなフォーマットに既存の収益化の仕組みをどう乗せるか」が課題となっていた。
「Googleは、2023年2月にYouTube Shortsの収益化ポリシーを設定し、収益化の条件の中にも『公開されているショート動画の過去90日間の視聴回数が1,000万回以上』といった内容を加えてきました。
従来のGoogle広告はキャンペーン別に広告を分けて展開していましたが、この方法だとShorts専用のキャンペーンを作成しなければならず、広告運用担当者にとっては手間が増えてしまいます。それでは広告出稿がされないと危機感を覚えたGoogleは、設計思想を約1年かけて変えてきたのです」
そして同年9月に発表されたのが、「動画視聴キャンペーン(VVC)」だ。同キャンペーンは、1つの動画を入稿すれば広告主のブランドや商材・サービスと相性の良い、購入意欲が高いオーディエンスに最も効果的なクリエイティブを、YouTubeのあらゆる動画フォーマットで配信できる。AIによって配信先の最適化がなされ、視聴回数を最大限に増やせるソリューションだと言える。
「動画出稿の道筋を、『形式』ではなく『目的』からスタートさせるようにしたのは、Googleにとって大きな変化です。それだけAIの判断に委ねられるようになってきたということもあるでしょう」
新しい世の中の動きに対し、ビジネスの柱を維持すべく構造改革に乗り出すGoogleの動きは、旧来の勢いを知る岡田氏からすると「ディフェンス的な動きも多く、少々寂しさを感じる部分もある」とのこと。
しかし、それだけ世の中の変化が激しく、GAFAのような世界を相手にする巨大企業でも、油断するとその波に乗り遅れかねないということであろう。波に飲まれるか乗りこなせるか。こうしたプレーヤーの動きは、ただサービスや機能のアップデートを追うだけでなく、いち企業で働く人々にとっても参考になる部分があるはずだ。