やおよろずの神VS無数の防犯カメラ
皆さんは日本と中国のサービスの違いに、どのようなイメージをもっていますか。
日本の場合、商品の品質だけでなく、店員のサービスマナーにも重点が置かれていますよね。日本では様々なところに「やおよろずの神」が宿るとされ、人に見られていなくてもマナーを大切にする考え方があります。
一方、中国では商品の品質が安定せず、「安かろう悪かろう」というイメージが強いのではないでしょうか。販売時の店員の対応を、素っ気なく感じる人も多いはずです。
たしかに、10年以上前はそのイメージどおりでした。しかし、5年程前から、急速に状況が変わってきているのです。DXが進んだためです。具体的には、「防犯カメラとAIの進化」が大きな要因です。
「初めて知った」という人もいるかもしれませんが、ここ数年で実際に中国へ訪れた人は非常に少ないはずです。
約3年間の「ゼロコロナ政策」において、中国への入国規制が設けられていたこと。日本人への、15日以内の滞在におけるビザ免除が解除されたこと。LINEやFacebook、Instagram、Googleといったサービスが、中国では基本的に使えないこと。国際ブランドのクレジットカードが利用できない場合があり、使い慣れていない「アリペイ」などのQRコード決済や各種アプリが必要となること。
こうした中国社会における仕組みが、外国人にとっては高いハードルになっています。近いのに遠い国になってしまいました。
そんな中、中国の街中ではいたるところに防犯カメラが設置されました。車道を走る車をチェックする防犯カメラが、一つの柱に20台近くあることも。交通機関の改札や空港なども、防犯カメラだらけです。
しかも、普通の防犯カメラではなく、個人を識別できるAIが搭載されています。人々の個人情報が紐付けられているのです。
加えて、外国人は中国への入国時に指紋や顔写真の提出が求められます。ホテルに泊まる際も、顔写真が必要です。そして、ホテルの廊下にも、多くの場合は防犯カメラが設置されています。
こうした取り組みにより、中国では、盗難などの犯罪が起きにくく、夜に女性が一人で歩けるようになりました。10年以上前には考えられなかった変化です。日本でいうところの「やおよろずの神」以上に、中国の人々は見られているのです。
防犯カメラを通じて得られる情報は、その管理者に収集され、評価されることで、治安だけでなくサービス品質も劇的に改善されました。