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Pinterest露出をかなえられるAmazonのスポンサープロダクト広告
田中氏が今回最初に触れたのは、Amazonのスポンサープロダクト広告について。同広告は、これまでAmazonの検索広告としてAmazon内のみでの表示にとどまっていたが、2023年8月16日(米国時間)に発表されたアップデートにより、PinterestなどのSNSや、Buzzfeedといったメディアへのオフサイト配信が可能になっている。
「これまでも、『Amazon DSP』を利用していれば外部プラットフォームへの出稿ができましたが、Amazon広告はAmazon内でのアプローチを基本としていました。それが、既にスポンサープロダクト広告を利用している場合は、特別な申請などを行わずともオフサイトへの配信ができるようになったのが、今回のアップデートの注目ポイントです。まだテスト段階ではありますが、Amazonもとうとう囲い込むだけでなく、外部へのアプローチに注力する段階に入ったと考えられます」
この広告の効果は未知数だが、田中氏は「ビジュアルの第一印象などで選ばれやすいアパレルや服飾雑貨は、Pinterestへの出稿機会を得ることでプラスに作用する部分があるのではないか」と分析する。いずれにせよ、Amazonにアクセスする購買意欲があるユーザー以外にもアプローチの機会を得られるのは、新規顧客拡大を試みる上でも有効といえるだろう。
「ただし、オフサイト配信で接触できるユーザーを購買に導くには、ハードルが存在するのも事実です。見た目のインパクトや好感度から商品詳細ページにアクセスしたユーザーに対し、『購入してもいいかも』と思ってもらうには、有益なレビューを増やすなどの努力も欠かせません。商品詳細ページの磨き込みにも目を向ける必要があると考えられます」
各SNSに浸透する、検索連動型広告メニュー創出の動き
ブランドにとって有益なアプローチ手段が増えた、ともいえるのが、2023年8月下旬よりTikTok広告の全広告主が利用できるようになった「検索連動型広告トグル」だ。
「検索連動型広告トグルが実装されたことで、広告主はTikTok内の検索結果一覧ページにインフィード広告を表出できるようになりました。これを活用すると、商品やブランド名に関連する用語で検索したユーザーへのリーチが可能です」
現段階では、既存の広告設定に基づいてTikTok側が独自ロジックを組み、表出する仕様となっているため、「このブランド名で検索したユーザーにリーチする」といったコントロールはできないが、D2Cやコスメブランドなど、露出強化を図りたい場合や類似商品との比較検討が行われる商材では、新たな接触機会創出が期待できる。
「2023年1月に『Twitterキーワード広告』を発表したTwitter(現X)や、同年3月に『検索結果での広告』を発表したInstagramの動きを見ても、検索連動型広告の需要の大きさがうかがえます。やはり広告主の需要としても、プラットフォームとしてパワーを発揮する上でも、『●●したい』という欲求があって行動を起こすユーザーにアプローチをかけるのが有効なのでしょう。これはある意味、『検索体験は消滅しない』ということの表れともいえます」