メンバーを個別最適に走らせない方法は?
第1回は「組織作りの基礎知識」について、第2回は「メンバー構成や目標設定」について紹介してきた当連載ですが、今回は「チームECで軌道力を高め、さらなる成長を目指す方法」をテーマにお伝えします。
ひとりECからチームECへ組織が成長する中で、「全体最適が難しい」「コンバージョンから遠いポジションのメンバーの評価をどうすべきか」といった相談をよく耳にします。担当者が個々のKPI達成を追求するがゆえに個別最適になってしまう、チームワークを発揮すべき場面でなかなか連携が取れないといった課題を抱えているようです。
メンバー一人ひとりが自分の役割をまっとうし、結果的に全体売上も伸び続けているのであれば、早急に何かしなくてはならないというほどではないでしょう。しかし、売上の伸びが鈍化してきたり、各担当者が「運用を変えたくないから」といった意識で自分の仕事だけに固執したりしているようであれば、要注意です。
ブランド立ち上げ期から働く人は、売上やコンバージョンが複合的な要素の絡み合いにより生まれることに加え、ひとつの指標だけを追求する危険性を認識しているはずです。こうした人々からすると「なぜ柔軟に動けないのだろう」「どうしていわれた仕事しかしてくれないのだろう」とフラストレーションを感じるかもしれません。
しかし、そのようなメンバーをどうやって採用したか立ち返ってみてください。「CRM担当募集」「メルマガ作成業務をお願いします」など、明確な要件を示して募集していなかったでしょうか? その場合、全体最適の視点は入社後に育成しなければ生まれてきません。むしろ、最初からその意識を持ったメンバーは称えるべき存在といえます。
担当領域のKPI達成に向け、愚直に取り組むメンバーに闇雲に要件外のことを求めて「やってくれない」というのはお門違いです。むしろ、責任感が強い真面目な若手メンバーほど、上司から自分に課せられたミッションをきちんと達成しようとするあまり、視野が狭まってしまっていることもあります。
そういった事態に陥らないよう、マネジメント層は全体最適にも目を向けられるような業務配分や指標設計、呼びかけ、振り返りの機会を設けなければなりません。また、メンバーからマネジメント層に正しい現状共有がなされるよう、失敗を咎めない環境や素早い報告、相談こそが評価される風土を作ることも大切です。
定例ミーティングを全体理解の場に
では、こうした環境や風土はどのようにして作られるのでしょうか。私は各個人が自身の目標を「点」でとらえるのでなく、全体売上からブレイクダウンして「この役割を担っている」と認識できるようにしなければならないと考えています。そして、個人の目標達成レベルを上げるには、関連する領域の担当者と手を組み、相乗効果を発揮するのが最短ルートであると意識づけるのです。
しかし、これらはトップやマネジメント層から口頭で訴えるだけではなかなか定着しません。連携が当たり前な組織風土を作るには、自部署の施策や数字を振り返る定例ミーティングを、他チャネルの現状や課題も理解できる場へと変化させるのが望ましいといえます。
ただし、このミーティングをただ「報告する場」にしてはいけません。場合によってはアイデアを募集したり手助けを依頼したりと、良いことばかりでなく悪いことも理解し、協力し合える関係構築の場にするのが肝要です。そうすると、メンバーも「自分が行う施策が他チャネルの担当者にどんな影響を与えるのか」「効率的に成果につなげるには、他部署と連携したほうがいいから相談してみよう」といったように、自然と視野が広がっていくはずです。