「真のインフルエンサー」はライブコマーサー
今、Z世代の女性たちから熱視線を浴びるインフルエンサーがいる。頻繁にライブ配信を行いファンとの交流を行っている、「ももち」こと牛江桃子氏だ。彼女自身も1996年生まれのZ世代。自身のアパレルブランド「Lil Ambition(リル・アンビション)」を、ライブコマース開始15分で完売するなど、現役ライブコマーサーとしての一面も持つ。
2017年よりアパレル店員として実店舗で働いた後、2019年にYouTube活動を本格的に開始。2022年には、タレントマネジメントやライブコマーサーの育成、D2Cブランドの運営などを行うM-YOU株式会社を立ち上げた。
牛江氏は、「ライブコマーサーこそが真のインフルエンサー」だと語る。
「ライブコマーサーは、視聴者が商品を購入する背中を押します。ファンとの信頼関係を築き上げ、心を動かすことでモノが動く。それは、インフルエンサーの本来の役割ともいえます」
ライブコマーサー・ももちの原点は、アパレル店員時代に経験した接客にある。接客を通して、顧客とコミュニケ―ションをとる楽しさに気づいたのだという。アパレル店員を辞める際、顧客へ実店舗を介さずに接客を続けたいと思ったことが、ライブコマースを始めるきっかけとなった。
「接客は好きですが自ら実店舗を持つのはリスクがありますし、遠方の顧客はすぐに来られません。ライブコマースなら、場所を問わず自分の顧客へ接客できます」
オンラインに場所が変わった今でも、牛江氏が当時リアルで接客していた顧客たちが、ライブコマースに訪れる。顧客との間に、強い信頼関係が構築されている証拠だ。
顧客との信頼関係を構築する上で、重要なのがコミュニケーション。Lil Ambitionのライブコマースを見てみると、視聴者から絶え間なくコメントが飛ぶ。「身長が154cmなのですが、ワンピースの裾を引きずらないか心配です」「ブラウンカラーにピスタチオカラーは合いますか」といった具合だ。
ライブコマースの配信中、牛江氏はこうしたコメントをできる限り読み上げる。そして、「階段を上がるときにワンピースの裾を引きずってしまうかもしれません」「ブラウンカラーのキャミソールワンピースにピスタチオカラーのカーディガンを羽織ったコーディネートを紹介した動画があるので良かったら見てください」など、その場で回答していく。
「髪を結んでみてください」「チェックのコートを羽織ってみてください」といったリクエストにも対応。牛江氏は配信中に何度も洋服を着替えながら、視聴者がコーディネートをイメージしやすいよう手助けをする。この即時性がライブコマースの肝だ。
「YouTubeの動画で商品を紹介したとして、視聴者がコメント欄で質問しても、配信者から回答をもらえるかわかりませんよね。質問に答えてもらえたとしても、時間がかかってしまう。その場で不安を解消できなければ、顧客を購入まで導くことはできません」