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おさえておきたいEC・通販先進企業

老舗通販企業のニッセンがEC時代に見いだした活路とは?


 通販企業として長らく活躍してきたニッセンは、ニッセンオンラインの運用をはじめとしたデジタルシフトを通じて、企業価値を更新し続けてきました。今回は、老舗通販企業のニッセンの強みや特長、EC時代に見いだした活路について解説します。

 婦人服販売に強い通販企業として存在感を示してきた株式会社ニッセンは、ECの普及に伴い、企業としての在り方を模索し続けており、現在も多くの固定客を抱えています。また、新しい顧客獲得に向けた取り組みも推進しており、今後の展開にも目が離せません。

 この記事では、老舗通販企業のニッセンがEC時代にどのように適応し、顧客獲得に取り組んでいるのかについて詳しく解説します。

株式会社ニッセンの企業情報・事業内容の概要

 まずは、株式会社ニッセンの基本的な企業情報について紹介します。

株式会社ニッセンの企業情報

 以下の表では、株式会社ニッセンの企業情報を簡潔にまとめています。

社名 株式会社ニッセン
本社所在地 京都府京都市南区西九条院町26番地
設立年月 2007年6月
代表者名 代表取締役社長 羽渕 淳
株式公開 未上場
資本金 1億円
おもなグループ会社
  • 株式会社ニッセンホールディングス
  • 株式会社ニッセンライフ
  • ニッセン・クレジットサービス株式会社 など

株式会社ニッセンの事業内容

 株式会社ニッセンは、婦人服を中心とした衣料品や、インテリア雑貨などのインターネット・カタログ通信販売を手がけている会社です。

 オンライン販売が主流ではあるものの、一部では店舗での婦人服販売も手がけるなど、厳密にはオンライン・オフラインを問わないBtoC事業を運営しています。

 また、近年は自社ノウハウを活かしたBtoB事業にも参入しており、プロモーションやフルフィルメント、ペイメントに関するサポートやソリューション提供を推進しています。

株式会社ニッセンの沿革

 以下の表では、株式会社ニッセンの沿革を簡単にまとめています。

年月 沿革
1970年4月

株式会社日本捺染の商事部を分離し、株式会社日本染芸設立

本社及び秋田営業所でカタログによる呉服の販売開始

1974年12月 商号を株式会社ニッセンに変更
1980年7月 京都市南区吉祥院西ノ茶屋町に本社ビル竣工
2004年6月 物流機能を分社化し100%出資子会社である株式会社ニッセン・ロジスティクス・サービスに移管
2007年6月

純粋持株会社体制に移行

株式会社ニッセンホールディングスと新設した100%子会社の株式会社ニッセンに分割(事業は株式会社ニッセンに承継)

2015年6月 株式会社通販物流サービスと合併、物流業、倉庫業を承継
2016年3月 大型家具事業撤退
2019年2月 株式会社マロンスタイル完全子会社化

 京都の呉服屋として設立された株式会社ニッセンは、1970年代より通販カタログを発刊し、一躍通販大手企業として名を揚げることとなります。自社独自の強力な物流網は80年代に確立され、2007年には持株会社制へと移行します。

 通販事業を一手に引き受ける株式会社ニッセンですが、純粋持株会社体制に移行してからは事業の整理を進め、事業売却などを経て現在に至ります。

株式会社ニッセンの強みや特長

 競合他社と比較して、株式会社ニッセンはどのような強みを発揮し事業を成長させているのでしょうか。ここでは同社の事業における特長や、近年力を入れているEC活用のアプローチについて解説します。

おもな事業の強み

 婦人服販売を始め、株式会社ニッセンはおもに消費者向けの事業で成長を遂げてきたイメージが強い会社です。しかし実際には、BtoB事業におけるノウハウ活用とデジタル活用が、同社の成長を支えてきた側面があることを見落としてはいけません。

 通販事業で40年以上の運営経験を持つ同社は、おもに以下の強みを有します。

  • 顧客データベース
  • 安定したインフラ
  • 蓄積されたノウハウ

 顧客データベースに記録されている顧客情報は3,000万件にものぼり、新興企業では太刀打ちできない情報量を有しています。また、1日あたりの商品発送数は5万件を超えるなど、通販事業を手がけるなかで構築した流通インフラも強力で、他社の追随を許しません。

 また同社には、商品を売る方法はもちろん、どうすれば商品が売れるのか、事業を育てられるのかといった豊富なノウハウも蓄積されており、それらをクライアント企業の問題解決に役立てています。

紙からデジタルへのシフトを進めるニッセンのEC活用

 株式会社ニッセンを含むニッセングループ全体で近年力を入れているのが、EC活用施策です。同グループでは総合カタログ依存モデルからの脱却を目指して、EC機能の改修や情報セキュリティの対策強化を行いながら、事業コストの最適化やEC主体型への戦略転換を図っています。

 また、他ECサイトでは取り扱いが手薄なビッグサイズ商品のラインナップ拡充などのニッチな施策も自社EC「ニッセンオンライン」を支える材料になっています。

 そのほか、売れ残りによる損失を回避するため、品ぞろえの絞り込みによる粗利率改善に注力したことも、同社の黒字化に貢献したとしています。

 これらの取り組みにより、株式会社ニッセンホールディングスとしての2022年連結売上高は前期比約5.9%増の約402億9,600万円となりました。

株式会社ニッセンの最近の動向

 ここでは、株式会社ニッセンに関するここ数年のトピックについて、気になるものをピックアップして紹介します。

ニッセンオンラインにて家具の試し置きサービス「ニッセンAR体験」が開始

 2022年5月、株式会社ニッセンはスマートフォンのカメラを活用し、部屋に家具やインテリア商品を設置したイメージを確認できるサービスを開始しました。

 インテリア商品や家具などをオンラインで購入する際、具体的な購入後のイメージがしづらいことが原因で購入に至らないケースがあります。そこで同社ではAR技術を活用し、スマートフォンカメラを使って自宅に商品を設置した際の雰囲気を確かめられるサービスを開始したのです。

 サービス開始当初のAR対応商品は大型家具15商品ですが、今後拡大していくとしています。

特殊サイズ衣料の専門店としてのブランド認知拡大

 先述のとおり、株式会社ニッセンは近年、特殊サイズ衣料の専門店としてもブランド認知が広がりつつあります。

 Amazonのような大手ECモールやユニクロなどの衣料品専門店では、満足のいく特殊サイズの品ぞろえを実現しているケースは多くありません。そこで株式会社ニッセンは、需要予測が難しい特殊サイズ市場の開拓に着手しています。

 具体的な施策としては、顧客の購入データなどから商品ごとの適正在庫数を予測し、売れ残りや欠品を防ぐノウハウでカバーするというものです。

 40年以上かけて蓄積してきた顧客データとノウハウがあるから実現できる、同社の戦い方といえるでしょう。

60代以上向け新カタログ「atrandom」でバリエーションに富んだ品ぞろえを提案

 株式会社ニッセンは、60代以上の顧客からの「最近、買いたいものがない」という声に応え、シニア層の多様な趣味嗜好に合わせたラインナップをそろえた新カタログ「atrandom(アトランダム)」を2021年5月に創刊しました。

 通販市場はECへのシフトが進んでいますが、従来の顧客のニーズを解消するためには紙媒体も依然として大切な媒体です。紙媒体にもテコ入れを行い、ニーズに合わせた情報を届けることで、顧客の高い満足度を維持する狙いです。

株式会社ニッセンの気になるトピックス

 そのほか、株式会社ニッセンの気になるトピックスについては、以下にまとめています。

2022年11月14日:【後払い決済事業会社・SCORE(スコア)】スマホアプリ決済サービスに、新たに「d払い」と「FamiPay」による決済サービスを導入。11月14日(月)よりサービス開始。

 ニッセンの子会社で、後払い決済事業を展開する株式会社SCOREは、後払いの支払い方法に、「d払い請求書払い」と、「ファミペイ」による「ファミペイ請求書支払い」を、2022年11月14日(月)より導入。

2022年9月29日:ニッセンがCXプラットフォーム「KARTE」のオフィシャルパートナーに認定。自社サイトで培った「KARTE」活用ノウハウを元に、導入支援や運用サポートを提供します。

 ニッセンは、株式会社プレイドの提供するCXプラットフォーム「KARTE」のOfficial Partnerに認定された。

2021年06月01日:ニッセン/楽天市場に「心地よいおうちづくり」がテーマのインテリアショップ

ニッセンは5月31日、楽天市場サイト内に、少しでも家での時間を快適に過ごすための空間づくりのサポートをするため、新たなインテリアショップ「COCOPLATZ(ココプラッツ)」をオープンした。

2021年2月24日:ニッセン、返品依頼の電話への自動対応にAIサービスを導入

通販会社のニッセンは、顧客からの返品依頼電話にAI(人工知能)技術を使って自動対応するサービスを2021年2月9日に導入した。

2021年2月2日:ニッセンが非対面の「置き配送」、ヤマト運輸の「EAZY」導入で実現

ニッセンは通販・ECでの注文商品について、対面に加え非対面での受け取り(置き配)を指定できるようにした。

まとめ

 この記事では、株式会社ニッセンの近年の取り組みについて、同社の強みや新たに採用しているEC活用に注目しながら紹介しました。

 通販会社としての同社のブランド力は、ECへの移行が進むなかで一時は停滞期に差しかかる場面もあったものの、40年以上の業界経験と膨大な顧客データベースを武器に、再び存在感を発揮しています。

 また、特殊サイズ衣料の販売や新しい紙カタログの創刊といった取り組みを通じて、同社の強みをいかんなく発揮しつつ、顧客の詳細なニーズにも応え続けています。

 自社の強みを正しく理解し、最大限発揮できる戦い方をすることの重要性を体現している企業といえるでしょう。

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この記事の著者

EC研究所(イーシーケンキュウジョ)

ECについての情報を調べ、まとめてお届けします。

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