リピート理由を掘り下げ顧客を主語に選択肢を
顧客を理解し、他社に模倣されない独自の感動体験を提供することが重要だと述べてきた山崎さん。今回は「期待を超える体験」を提供するためのノウハウを聞いた。
「お客様から当社へお問い合わせをいただく際には、ざっくりと『CRMにきちんと取り組みたい』といったお声をいただきます。CRMを回し続けるために具体的になにから始めるかと言うと、多くの場合が既存業務の効率化です。掘り下げたデータ分析が行えていない、DMのリスト抽出に時間がかかる、セグメントごとのメールの出し分けをしたいのにできていない、といったお悩みを現場の方からよくお聞きします。日々の仕事に追われ、本来やりたいことができていない状況の改善から着手するわけです」
CRMの基本施策であるメールマーケティングを行うツールとしては、MA(マーケティング・オートメーション)がまず思い浮かぶ。本来の目的を達成すべく活用することができれば、その名のとおりマーケティングにまつわる作業が自動化され、業務効率化につながるわけだ。工数削減に成功し、時間に追われない状況になったら次のステップは「顧客理解」となる。 「期待を超える体験を提供したいのであれば、まずはお客様が期待されていることを理解しなくてはいけませんよね」
CRMはわかりやすく言えば、何度もリピートしてもらうための取り組みだ。なぜ顧客が繰り返し利用しているのか、商品の評価ポイントはどこかといった項目について、定期的にアンケートを実施するなど地道な調査を繰り返していくことが重要だと山崎さんは言う。
「リピートしてくださる顧客の声から高評価をいただいているポイントがわかると、『もっとこうしたら喜んでいただけるのではないか』と、成果につながる施策のアイデアが湧いてくるものなのです」
湧いたアイデアを実行する段階になって、メールかLINEか、アプリかといったツールの選択となる。この段階でも重要なのは顧客理解だ。さらに言えば『これは有益か』の判断基準は、主語が顧客になっているかが重要であり、施策の成否も分けると言う。
「たとえばメールの効果が下がっているからLINEを取り入れるというのは企業の都合であり、主語が顧客になっていません。企業努力というのは、顧客にとって有益な選択肢を提示するために、たとえばメールかLINEか、どちらでも顧客が好きなほうのツールを選べるようにすることです」
業務効率化により考える時間を作ること。リピート理由を地道に探ること。そして顧客を主語にした利便性を提供するため、選択肢を増やすこと。一連の流れのブラッシュアップを繰り返すことで、野球で言えばバントでつなぐうちにヒットが生まれ、点に結びつく。ホームランを打とうとしないことが重要だ。
「期待を超える体験と言うと一発逆転ホームランをイメージしがちですが、顧客理解に基づいた工夫を積み重ねているうちに、気づいたら総合評価が上がっているというほうが遠回りに見えて、結果的に期待を超える体験を生み出す近道だと考えます」